甘い果実
1891年イシュルにブラームスを訪問したマーラーは、それを友人に手紙で報告している。
その中で、マーラーはブラームスを「節くれだってごつごつとした老木だが、甘い果実を結ぶ」と表現している。鬱蒼と葉を茂らせたたくましい幹を見るのは楽しみだとも言っている。
30代そこそこのマーラーの60歳に近づいたブラームス評として興味深い。
同じ手紙の中で「我々のやりとりは友情とは言えない」とも言い添え、ブラームスに気に入られそうな面だけを出すようにしていると明言している。
おそらくブラームスに近づいたのは下心もあったに違いない。ウィーン宮廷歌劇場のポストを狙うマーラーにとっては、ブラームスの覚えめでたいということが不可欠なのだと感じる。
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