大火
米国では発生したハリケーンに名前を付ける。アルファベット順に男女交互の名前があらかじめ用意されている。日本の台風は毎年発生順に番号が付与されるに過ぎない。
台風には名前はつけなかったのだが、江戸時代にしばしば猛威をふるった大きな火事つまり大火には名前がついている。1657年の大火は「振り袖火事」、1682年のものは「お七火事」という具合だ。ハリケーンは発生と同時に命名されるが、火事は鎮火後だ。迫り来る火から逃れるだけで精一杯で名前をつけているヒマはない。大勢の人の命を奪う火事だが、その魔の手から逃げきった人々が後から名前を付けるのだ。
ブラームスの故郷ハンブルクも大火に見舞われた。
1842年5月5日午前1時に出火。折からの北西の風に煽られて丸2日燃え続けたという。消失面積は約160平方キロだ。ハンブルク市の下町ほとんど全てを焼き尽くしたこの火事の規模がどれだけかというと、神奈川県川崎市を焼き尽くしたくらいと思えばどれだけの一大事か想像が付く。
ブラームスの伝記のうちいくつかはこの大火に言及している。ブラームスはもちろん家族もこの火事で亡くなっていないが、親戚あるいは知人の中には命を落としたり家財を失ったりした人もいるだろう。それがブラームスのペシミスティックな人生観に影響を与えたという説を提示している記述もある。
何よりもブラームス9歳の誕生日の2日前だ。丸2日燃えたとあるから鎮火は5月7日だったハズだ。この年ブラームスは誕生日を祝ってもらえなかった可能性もある。
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