サウル
ヘンデルのオラトリオのタイトルだ。ハンブルク時代の若きブラームスはこの作品に親しんでいた。
1862年9月ウィーン進出を決意したブラームスは、故郷ハンブルクを立つに当たって父親にこう切り出す。
「ことがうまく行かなくなった時の最高の慰めは、決まって音楽です」「ただ私の『サウル』の中だけはよくご覧になってください」「必要とするものがきっと見つかります」
ブラームスはヘンデルのオラトリオ「サウル」の総譜の中に、まとまった数の紙幣を挟んでおいたのだ。29歳の息子は故郷を立つにあたって、父にへそくりを置いてきたというわけだ。まだブレーク前とは言え、このときまでにささやかな蓄えがあったと考えられる。何だか遠回しなところがブラームスらしい。
家族への経済的援助は、その後も終生続くことになる。
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