ベートーヴェン賞悲話
ハンス・ロットHans Rottという男がいた。ウィーン音楽院時代のグスタフ・マーラーの学友だ。才能ある男で卒業作品のコンペで惜しくもマーラーのピアノ五重奏曲の前に涙を呑んだ。マーラー自身も彼の才能を高く評価した。
ハンス・ロットは、1880年のベートーヴェン賞に応募すべく交響曲を完成させた。それを有力審査委員のブラームスにピアノで演奏して聞かせた。そこで彼は「作曲を諦めたほうがいい」というほどの酷評にあう。落ちたも同然というショックを受けて精神を病む。フランスに近いミュールハウゼンという街に職を求めて列車で赴任する途中、乗り込んだ列車にブラームスが爆薬を仕掛けたという妄想にかられて精神病院に収容される。4年後1884年にそこで没した。
悲しい話だ。ブラームスの伝記にはけして現われないエピソードである。
ブラームスとマーラーの間に横たわる越え難たい溝は、1881年の「嘆きの歌」の落選に先立つ悲劇によって予告されていたかのようだ。
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コメント
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<ハム様
いらっしゃいませ。ハンスロットについては今となっては何とも申し上げにくいところです。
投稿: アルトのパパ | 2011年5月17日 (火) 20時31分
ブラームスはドヴォルザークを見出して、ドヴォルザークはついにはブラームスに匹敵するほどの大作曲家になるなど才能を見る目はあったんでしょうが、ハンス・ロットに関しては曇っていたんでしょうかね
「ブラームスが爆弾を仕掛けた」確かにこれは悲しい音楽史のエピソードですね(´・ω・`)
投稿: ハム | 2011年5月17日 (火) 19時00分