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2011年7月16日 (土)

お盆のファンタジー8

昨日昼頃になって二日酔いで起きてきたブラームスと対照的に、ジムロックはまた冷静な口調で何卒サインをと言ってきた。交渉の続きがお望みらしい。すっかり打ち解けて度胸がついた私は「英語版の版権もつけて20000マルクではいかがか」と言ってみた。ジムロックさんが困った顔をしているのを見てブラームスが「わしもつきあいは長いが、こいつの困った顔をみるのは珍しい」としゃしゃり出る。茶化し専門だ。ジムロックはここでブラームスとひそひそ話を始めた。

やがてこちらにむきなおったジムロックは「英語版込みで15000マルクではいかがか」と譲歩して見せた。ブラームスは「わしの交響曲1曲と同じじゃよ」と何気にアシスト。ブラームスにアシストされてはこれ以上ごねるのも無理だ。「OK」と言うとジムロックは嬉しそうに握手を求めてきた。私が「で、英語版の翻訳は誰に頼むの?」と訊くとあっと驚く答えが返ってきた。「ドヴォルザークにお願いする」とは転んでもタダでは起きない商売人だ。

こちらも提案することにした。15000マルクは要らないから「ドヴォルザーク全作品の楽譜をくれ」と言うとジムロックもブラームスも腰を抜かさんばかりに驚いた。「本当にそれでいいのか」と私の顔をマジマジとのぞき込んだ。「出来ればドヴォルザークのサイン入りがいい」と言うと「それが一番難しい」と腕組み。

たった今帰っていった。フランクフルトに寄って帰るらしい。決勝戦を生で見るのだろう。今年は全く楽器に触らずに商談に徹した感じだった。驚いたのは帰り際に漏らしたジムロックの一言だ。「ドヴォルザークの辞書を書いたらまた版権を売ってくれ」とは仰天の申し出だ。この手の先読みが敏腕経営者の条件に違いない。

次女が高校オケに入った話しもしそこなった。

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コメント

<narkejp様

ありがとうございます。
お盆ネタは来年までお待ちください。

「お盆のファンタジー」シリーズを楽しく拝見しております。私も15,000マルクよりもドヴォルザークの楽譜のほうがいいなあ。当地はど田舎ですので、ドイツ・マルクなど使い道がありませんが、ドヴォルザークの全楽譜なら、使い道はいくらでもありそうです(^o^)/

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