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2011年8月23日 (火)

近代ドイツ民謡学の展開

最近感動した本。正式には「ルードヴィッヒ・エルクと近代ドイツ民謡学の展開」という。つまり一昨日話題にしたルートヴィッヒ・エルクの功績を記述した本だ。著者はドイツ人エルンスト・シャーデという人で、坂西八郎訳とある。1977年に刊行された。もちろん絶版だろう。ふらりと立ち寄った古書店で偶然みつけた。

音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第2巻のホイベルガーとの会話の中に、「エルク」という名前が頻発する。それが頭の隅にあったから手にとった。パラパラと目次をめくっているうちに虜になった。新刊のときの値段が3500円だったが、1050円で入手出来た。お得感で胸がいっぱいになった。260ページに及ぶ内容はざっと以下の通り。

  1. エルクの生い立ち
  2. 他の民謡集に対するエルクの見解
  3. エルクの民謡コレクションの概観
  4. 民謡収集の実態
  5. 民謡分類の手法
  6. 民謡の源泉形態の追究
  7. 民謡観
  8. 同時代人評価
  9. 文献目録
  10. 人名索引

エルクの業績は口伝によって現存する民謡を多岐にわたって網羅的に収集することを基礎に、テキスト、旋律の両切り口を平等に扱ってより始原的な形を類推特定して行く試みだ。おそらくその裾野は数十万の旋律の断片だ。整理および体系化により数千が刊行されていると思われる。エルク本人に音楽の素養があることは、もちろんだが彼の功績を公平に評価するには、こちらの側に膨大な知識の蓄積が必要となる。音楽および音楽学は当然として、方言学、音韻学、古文献学、地理学、歴史学、民俗学、社会学、比較文化論の諸領域の知識の底流を感じずにはいられない。

彼の結論をいくつか。

  • 民謡の伝播は、河川山脈などの地理的障壁はもちろん、国家体制などの政治的障壁をも容易に乗り越える。
  • 歌い継がれて行く過程で、旋律もテキストも容易に変化するが、その変化には一定の決まりがある。
  • 旋律とテキストは密接不可分。
  • 民謡として現存する歌には多くの場合作詞者と作曲者が存在し、自然発生はほぼあり得ない。
  • 芸術歌曲との境界は、模糊としている。

凄い業績だと感じる。ブラームスはエルクの業績のどこを見て何に怒ったのだろう。

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