人名索引
多くは書籍の巻末にあって、登場人物が五十音順またはアルファベット順に網羅列挙されている記事のことだ。私は書店で音楽関係の書籍を手に取った時、真っ先にここを見る。ブラームスの場所だ。そこに盛りだくさんの数字が並んでいれば購入の可能性が高まる。目次と並ぶ情報の宝庫である。
8月23日の記事で「近代ドイツ民謡学の展開」という本について述べた。この本にも巻末に人名索引がある。19世紀ドイツを舞台にしたとはいえ、あくまでも民謡の本だから、クラシック系の作曲家の名前がほとんど載っていない。わずかに5名、メンデルスゾーン、モーツアルト、バルトーク、コダーイそしてブラームスだけが人名索引に載せられている。ブラームス以外は話の流れでチラリと出て来るだけだが、ブラームスの話は1ページ弱のスペースが与えられている。「エルクの民謡集に下された同時代の判定」と題された第5章の末尾に出現する。著者エルンスト・シャーデ先生は、はっきりとエルクとブラームスの見解が真っ向から対立していたと書く。
エルクの立場は出来るだけ多くの旋律を集めて、体系的に分析した上でもっとも始原的な形で旋律とテキストのみを記載するというものだ。ブラームスは、網羅的であることを批判する。作品の善し悪しが基準になっていないと指摘する。シャーデ先生は、収集に軸足があるエルクと芸術的価値に軸足を置くブラームスの立場の違いと結論付けておられる。エルクの収集の対象となった地域がブランデンブルクにとどまるというブラームスの明らかに誤った認識には、論及を避けている。
困る。私はブラームスが残した民謡および民謡にテキストを求めた作品を心から愛するものだが、学問への姿勢という面でエルクの功績にも素直に頭を垂れたい。
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