疑似民謡集
ツッカルマリオの「民謡集」について、ブラームスとエルクの評価が食い違っていることは既に言及した。ブラームスが「49のドイツ民謡集」の編集にあたってツッカルマリオを参照したことはよく知られている一方で、エルクは辛口の批評をしている。
民謡学者たちの趨勢はどうもエルク寄りにあったらしい。ツッカルマリオの民謡集がしばしば「疑似民謡集」と呼ばれている。民謡風な作品をツッカルマリオ自身が作曲していると指摘されている。当代の作曲家によって付与された旋律は、エルクにとって忌避の対象であり、そうした現代の旋律と伝承された民謡との峻別こそが、研究の根幹でさえあった。
いわば「民謡風」である。
ブラームスは、民謡風であっても芸術的な価値があれば採用の対象とした。「それっぽく見せる」テクニックをも積極的に評価したということだ。
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