Volkslied
大抵は「民謡」と訳されているが、文献上において最初にこの言葉を使ったのはヘルダーだとされている。発生の起源はほぼこれで決まりだとされている一方で、その定義については本場ドイツでも諸説入り乱れているらしい。「Lied」はともかく「Volks」の概念が時代により人により千差万別であることが、事態を難しくしているという。
印象的で覚えやすい旋律に、実生活に即した歌詞をあてがうことが民謡の原点らしい。19世紀後半を迎えるまで、その伝承はほぼ口伝に限られた。だから人により時代により様々なヴァリエーションが生じる。本質的にはこのような「歌い崩し」が発生することこそが民謡の特色だった。となると楽譜やCDになってしまった歌は「歌い崩し」が起きないという意味で最早民謡とは言えなくなる。
民衆の間にあってこその民謡で、学術的な観点だろうと何だろうと、採譜されたが最後たちまち本質を踏み外してしまう。
そうした避けがたい矛盾を内包しながらも、民謡は古来人々を惹き付け続けてきた。時には大作曲家たちの創作意欲をも刺激してきたこと周知の事実である。
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