民謡ベスト10
「民謡特集」を始めておよそ1ヶ月経過した。「民謡特集」などと大きく振りかぶったから、「49のドイツ民謡集」あたりの話を最初から公開するという手もあったが、じっと我慢してエルクネタから入った。いよいよ満を持してブラームス選編曲のドイツ民謡集から私的ベスト10を選定する。
WoO31からWoO38まで計161曲からの選定だ。
<1位>別れの歌 (Abshiedslied)WoO32-17、WoO34-9、WoO38-5
まさに絶唱だと思う。独唱、混声合唱、女声合唱の3通りの楽譜があることもうなずける。集大成たる「49のドイツ民謡集」に収載されていない本作を第一位に選定する番狂わせ。それほどの気に入りようだ。別れの席で歌われる際の効果も絶大だと思う。
<2位>下の谷底には (Da unten im Tale)WoO33-6、WoO35-5、WoO37-10
マリア・フェリンガーから教えられたシュヴァーベン地方の民謡だという。女の側から失恋を歌うテキストだが、未練、絶望とは無縁の品格がある。
<3位>許しておくれ (Erlaube mir)WoO33-2、WoO35-3、WoO38-4
男が庭に入ることを求める歌。庭のバラを手折りたいと言いながら娘がお目当てというセレナーデの典型を示す。とはいえ口調には品格が溢れ、がっついたところが全く感じられない。
<4位>静かな夜に (In stiller Nacht)WoO33-42、WoO34-8、WoO36-1
独唱版は華麗な伴奏により民謡離れしたニュアンスだが、合唱版はよりシンプル。静謐な夜の描写が秀逸。実質ブラームスの創作ではないかという根強い噂がある。
<5位>目覚めておくれ (Wach auf)WoO32-14、WoO33-16、WoO35-2、WoO35-7、WoO37-16
見ての通り5通りの楽譜が残りブラームス本人の入れ込みぶりは明らか。男から恋人への呼びかけだが、屈託が無い。
<6位>お姉さん (Schwesterlein)WoO33-15、WoO37-1
民謡にあっては珍しい姉と弟の対話だが、話題はやっぱり姉の恋だ。陰影に溢れた短調でぐいぐいと人を惹きつける。
<7位>私の心は優しくよりそう (Gar lirblich hat sich gesllet)WoO33-3
恋に落ちる瞬間を男の側から歌う。一陣の風がサッと通り過ぎるような快速なト長調が爽やかだ。
<8位>お嬢さんご一緒に (Jung fraulein soll ich mit euch gehen)WoO33-11
貴方の庭にバラを摘みにと誘う男と、拒む女の対話。テキストを読む限り恋は成就していないが、屈託がない。巧みなピアノ伴奏により対旋律が浮かび上がる。
<9位>一本の菩提樹が (Es steht ein Lind)WoO33-41
恋人を失った悲しみを1本の菩提樹に託した歌。男の立場から歌われるが澄み切った長調のおかげでお涙頂戴に堕落せずにすんでいる。
<10位>グンヒルデ (Gunhilde)WoO32-10、WoO33-7、WoO37-5
グンヒルデという尼僧の不幸な生涯を描く事実上のバラード。テキストの意味するところは悲惨な話だが、およそ似つかわしくない澄み切った長調で淡々と描かれる。
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