民謡の手書き譜
世界最高のブラームス本マッコークルの「ブラームス作品目録」は、民謡の部分についてもさすがに芸が細かい。WoO31から38に至る「ドイツ民謡集」がきっちりと掲載されているほかに、ブラームスが残した各国民謡の手書き譜が全て載っている。さすがに譜例は無いものの作品の歌い出しのアルファベット順でなんと240作品に及ぶ。
厳密に申せばモテットも含まれているが、民謡についてはブラームス編曲として刊行した作品の楽譜は30曲に過ぎない。民謡収集の範囲はドイツを中心に欧州諸国を網羅する感じだ。ドイツを除けばロシア、ポーランド、スウェーデン、ノルウェイ、デンマークなどが多い。フランスまであるのが微笑ましい。
筆写した年代も1850年代から1880年代までずっと続いている。ブラームスは欧州各地の民謡に触れ、これはと思う作品をせっせと書きとめたのだ。刊行にこぎつけた民謡はその精華、抽出物であると心得たい。さらに付け加えるなら、ブラームスの耳に触れた民謡の数は、ここに掲げられた数の数倍に及ぶと思う。
1894年になって、これらの譜面を整理する中から「49のドイツ民謡」を選び出したのだ。
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