レアンドロス
ギリシャ神話の登場人物。ヘロとのロマンスで名高い。彼は恋人のヘロに会うために毎夜ダーダネルス海峡を泳いで渡った。ヘロは美の女神アフロディーテに仕える身だから結婚が許されていない。つまり禁断の恋だ。だから危険を冒して夜の海を泳いでわたる。ヘロはレアンドロスのために目印となる灯りをつけていたが、強風で消えてしまい、レアンドロスは溺れ死んでしまう。ヘロは絶望のあまり塔から身を投げた。
昨日話題にしたドイツ民謡「二人の王子」はこの話が題材になっている。ドイツ人にとってそこそこ知られた話なのだ。
ブラームスの親友ヨアヒムは交響曲第3番第4楽章52小節目の第二主題を聴いて「ヘロポントス(ダーダネルス海峡)を泳いでわたるレアンドロスのようだ」と称している。激情にかられて荒れ狂う大自然に挑む若者の姿を想像したと告白している。ハ長調で奏でられるチェロとホルン雄渾な旋律だ。ヨアヒムもブラームスもこの話を知っていた可能性が高いばかりが、それを題材にした民謡も知っていた可能性もある。
ブラームスが関与した民謡にとどまらず、民謡一般の知識習得を試みる中から民謡「二人の王子」を通じてレアンドロスの話を知った。おかげで第3交響曲についてのヨアヒムの比喩が具体性をもって実感できた。
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