茶摘み
文部省唱歌「茶摘み」は「夏も近づく八十八夜」と歌い出される。冒頭を移動ドで読むと「ソドレミ」になる。どうもこの「ソドレミ」はドイツ民謡の歌い出しに多い。つまり旋律の類型化における形質の一つとして採用し得るのではないかと感じている。
WoO31、WoO32、WoO33の民謡集に収められた作品76曲の中で「茶摘み型」で立ち上がる作品を抽出してみた。スペースを節約するために略号を用いる。「3104」は「WoO31-4」のことである。
- 3104 5,123 Gdur 4/4 Andante 「砂の精」で名高い。
- 3112 5,123 Gdur 6/8 Con moto
- 3204 5,123 Gmoll 2/4
- 3220 5,123 Edur 2/4 Lebhaft und mit Laube
- 3222 5,123 Amoll Ruhig und erzahlend
- 3308 5,123 Gdur 3/4 Mit guter Laune
- 3314 5,123 Amoll 2/4 Ruhig und erzahlend
- 3324 5,123 Gdur 4/4 Massig bewegt und Ausdrucksvoll
- 3331 5,123 Gmoll 2/4 Zierlich und lebhaft
- 3333 5,123 Edur 2/4 Lebhaft und mit Laune
- 3334 5,123 Amoll 4/4 Lebhaft
- 3335 512,3 Adur 3/4 Gehend und mit herzlichem Ausdruck
- 3336 5,123 Amoll 4/4 Lebhaft,doch nicht zu rasch
- 3338 5,123 Amoll 2/4 Nicht zu langsam, erregt
- 3340 5,123 Amoll 6/8 Unruhig bewegt und heimlich
- 3343 5,123 Fdur 4/4 Andante
- 3349 5,123 Amoll 2/4 Andante
76曲中17曲22%が「茶摘型」だ。4ケタの曲名略号の次をご注目いただきたい。「5,123」とある。これは茶摘音形「ソドレミ」のうちどこで小節線を跨ぐかというデータだ。カンマの位置が小節線を現している。17例の中で12番WoO33-35だけが「レ」と「ミ」の間に小節線を跨ぐ以外は、皆「ソ」と「ド」の間だ。
民謡の場合楽譜上の形質を必要以上に重視してはならない。伝承中は口伝えだ。楽譜で伝承されているわけではない。それが採譜を経て印刷譜として刊行される段になって初めて楽譜に落とされる。調も拍子も発想用語もその段階で決するのだ。それに比べると「ソドレミ」のような音のパターンにはより深い積極的な意味があると思われる。
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