お嬢さんご一緒に
「Jungfraulein,sol ich mit euch」と歌い出される民謡。「49のドイツ民謡集」WoO33の11番に置かれている。
1894年に出版されたこの曲集はブラームスの民謡研究の集大成だ。だからここに収録されているということは、ブラームス本人に相当な愛着と自信がある証拠だ。WoO32およびWoO34からWoO38までの民謡集とテキストや旋律の重複が頻繁に起きている。合唱版では見られない凝ったピアノ伴奏も散見される。
ところが、このWoO33-11は例外だ。重複が見られない。合唱版も独唱版も先行する曲集に存在せず、集大成たるWoO33にいきなり登場する。ブラームスの遺品に含まれていた数葉の手稿譜が残るだけだ。これだけの作品が他に痕跡を残していないことが腑に落ちない。ブラームスがこの作品に出会ったのがハンブルクを離れた後、さらにWoO34の出版の後である可能性が高いと思う。
屈託のない明るさが、快速なテンポでサクッと歌われる。耳を澄ませば民謡らしからぬ凝った伴奏を持っていることが判る。主旋律以外の旋律線がクッキリと仄めかされている。民謡に対位法的な処理が施されている感じだ。
だからいっそう不思議なのだ。
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