ドイツ民謡の沃野
記事「ルードヴィッヒ・エルク」でエルクが取り扱った民謡が20万から30万と述べた。断片も含むし、類歌もあろうが、それにしてもな量である。
一方でブラームスのドイツ民謡への傾倒は周知の通りだが、生前に民謡集として出版された作品は78曲。没後の出版を加えると160を数える。さらにテキストを民謡詩に求めつつ、曲を付した作品が独唱、重唱、合唱を合わせて71曲ある。
一方民衆の間で歌い継がれてきた歌は、もの凄い量がある。そのほんの一部をブラームスが自らのセンスで取り込んだ。ブラームスへの民謡情報のインプットは、出版された作品数に比べればもっと多かったと思う。それを自らのセンスで和声を施し、ピアノ伴奏を付与したと解したい。現在流布する民謡集は、ブラームスというフィルターを通して回収された抽出物だと位置づけられる。
ブラームスにとって民謡は、作品の題材として無限の沃野だったと思われるが、何から何まで無制限に取り込んだわけではない。作曲家ブラームスの眼力に照らし、後世に残すべきか否かという厳密な基準が存在したに決まっている。
骨董品の収集とは一線を画していたことは確実だ。
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