万能下の句
父が俳句に親しんでいたことは既に述べてきた。小学校で百人一首に目覚めたころ、いろいろな替え歌を教えてくれた。短歌五七五七七のうち、最初の五七五が上の句で最後の七七が下の句と呼ばれている。父はどんな上の句にも合う「万能下の句」を教えてくれた。
「それにつけても金の欲しさよ」
上の句は何でもいいから当てはめてみる。
「古の奈良の都の八重桜それにつけても金の欲しさよ」
「古池や蛙跳びこむ水の音それにつけても金の欲しさよ」
なるほどという感じだ。同じ事が俳句にもあって、「根岸の里の侘び住まい」がそれにあたるという。
「五月雨や根岸の里の侘び住まい」「行く春や根岸の里の侘び住まい」という具合だ。
同じノリが学生歌にもある。「エルゴ・ビバムス」(Ergo Bibamus)だ。何とテキストはゲーテ作。ラテン語とドイツ語のチャンポンになっている。このタイトルはラテン語で「だから飲もう」という程度の意味。これがまさに本日のお題「万能下の句」だ。「今日は天気が悪い。だから飲もう」「今日は天気がいい。だから飲もう」という調子だ。前半でどんな議論が展開されていようとも。結論はいつでも「だから飲もう」に収まる。
学生たちはこういうノリが好きだ。だから学生歌「エルゴ・ビバムス」は、大抵の歌集やCDに採録される定番になっている。
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