軍楽隊の編成
実はドイツでは我々が日常親しんでいるクラシック音楽業界と平行して、ミリタリーマーチの世界が音楽界に並存している。一部クラシック系音楽との交流も起きているようだ。強国プロイセンの軍隊には行進曲の伝統があったのだ。
さて、我がブログの主人公ブラームスは軍隊系のマーチを遺してはいないが、それらの知識には事欠かなかったというささやかな証拠がある。親友にして大出版社の経営者ジムロックの証言だ。
大学祝典序曲の出版をめぐるブラームスとのやりとりの中で、ジムロックはブラームスに大学祝典序曲を軍楽隊の編成で出版するように薦めたという。もちろん結論から申せばこの話は却下になっているのだが、興味深い。
周知の通り大学祝典序曲はブラームスの管弦楽作品の中では、使用楽器の幅がもっとも広い。特に管楽器と打楽器の見本市だ。ジムロックはこの作品がブラームスの通常の管弦楽に無い特徴をもった編成だと瞬時に見破って、軍楽隊の編成を提案したと思われる。現行の大学祝典序曲の編成から弦楽器を省けという意味だ。
別人の編曲で恐縮だが1889年になって軍楽隊用の編曲版が出版されている。ブラームスの管弦楽曲で軍楽隊版が存在するのは大学祝典序曲だけである。
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