Dutzen
昨日の記事「親称と敬称」でドイツ語の「Du」と「Sie」にまつわる学士会の慣習について述べた。
音楽之友社刊行の「ブラームス回想録集」第2巻197ページに「ドゥーツェン」についてのホイベルガーとの会話が記録されている。ドイツ語のスベルが書いていないが「Dutzen」でよいと思われる。注には「お互いにDuで呼び合うこと」と書いてあるから間違いない。
それによれば、ブラームスはこうした呼び合いに批判的だったとされている。酒宴で「ドウーツェン」のノリになることがあるけれど、翌朝には忘れていると言っている。また友人で音楽学者のノッテボームのこととして「あちこちで兄弟づきあいしている割に、お前呼ばわりされると不機嫌になる」と言っている。ここでいう「兄弟」がどういうドイツ語の反映かは知る由もないが、学士会用語「Dutzenbruder」かもしれない。「Du」と呼び合う間柄を指す言葉だ。日本の一般読者向けの訳出としてはこのあたりが限度だろう。
この周辺の記事、以前は読み飛ばしていたが、学士会の知識を下地にして読むと理解が深まる。
1896年12月のことだから、ブラームスはもう63歳だ。
コメント