鹿狩
中世ドイツにおける狩は、いやいや19世紀においてさえしばしば貴族のたしなみだったという。彼らが狙う獲物の代表が鹿だ。ドイツ語で「Hirsch」(ヒルシュ)という。多くの場合、鹿は「Schwarzbraun」と形容されている。「黒褐色の鹿」だ。男性名詞である点にさえ目を瞑れば「つぶらな瞳」「黒褐色の毛」「か細い足」を持つ鹿は、しばしば若い女性を象徴することとなる。一方貪欲にどこまでも鹿を追い詰める狩人は、つまり男性を象徴するのだ。
ブラームスの「少女はばら色の唇」WoO33-25は、恋人を象徴する5つの色がまばゆい民謡だが、そこで「Scwarzbraues Magdelein」は、黒褐色の(髪を持つ)女と表現されていて、鹿を形容する言い回しと一致する。
一方「おいらは鹿を討つ」(Ich schiess den Hirsch)というドイツ民謡では勇壮な1,2番の歌詞が3番では、瞬時に恋の胸のうちを明かす歌詞に転ずる。
「Schwarzbraun」と形容されるものがもう一つある。「Bier」だ。まさに「Das schwarzebraunen Bier」というタイトルの学生歌がある。「Schwarzbraun」という切り口で「鹿」「女」「ビール」という具合に容易に連想が発展する。そのせいでもなかろうが、狩をテーマとする民謡の多くが、学生歌に転用されている。私にも覚えがある。学業そっちのけで音楽に打ち込んでいたというのは表向きで、実は女性との語らいやコンパが楽しみでもあった。現代日本ではキャンパスの鹿狩どころか、狩人が草食化してしまっているらしい。
しかし本日に限って黒褐色といえばチョコレートがふさわしい。
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