正確な歌唱
記事「学士会名誉会員」の中で、ホイベルガーはブラームスが学生歌を歌うのを聴いたと書いた。そればかりか「歌唱が正確であった」と明言している。残念なのはブラームスが実際に合唱団の一員としてコンサートに出演したのか、打ち上げの宴会で歌ったのか判然としないことだ。
さて、ここでいう「正確な歌唱」というのはどういうことだろう。ホイベルガーはブラームスより17歳年下の音楽家だ。作曲家としても知られているが、最初は合唱指揮者として台頭した。そのホイベルガーが「正確な歌唱」と言うからには、そこそこの根拠があるに決まっている。
「音程やアーティキュレーションがよく、間違えずに歌えました」程度の意味ではないような気がしている。
学生歌についての記事を延々と連ねてきた経験から申せば、学士会の酒宴では、宴会の進行に合わせて次々と学生歌が唱和されるが、ブラームスはそれらをことごとく歌えたという意味だと感じる。学生歌集には楽譜無しの歌詞だけという代物も多いが、歌詞のみを参照しながら、歌詞も節も間違えずに全て歌えたという意味に違いない。
その時既に第1交響曲が世に出ていた。当代屈指の巨匠ブラームスが学生に混じって、気さくに学生歌を唱和している驚きと感謝も、盛り込まれているかもしれない。
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