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2012年4月 7日 (土)

マイスタージンガーハレ

思わぬハプニングが、かえってメンバーの闘志に火をつけた4月1日のニュルンベルク公演だった。その会場の名前が「Meistersingerhalle」という。ニュルンベルク市直轄のホール。ここの大ホール(GrosserSaal)で演奏させてもらった。2200人収容のホールなのだが、満席。お客さんの入りを見ただけで感動。入場無料とはいえ大したモンだ。生徒たちにとっての夢舞台。親たちにとっても感動モンで正直なところ膝が震えた。

演奏会のプログラムは以下の通り。

  • 和太鼓演奏 菅谷大樹:「ひかり」 「日本から来ました」という名刺代わり。打楽器担当の生徒8人による熱演。アウェイ聴衆の心をいきなり鷲づかみ。
  • ワーグナー:マイスタージンガー前奏曲 そりゃここはニュルンベルクで、ホールはマイスタージンガーハレだから。今度こそフルオケのご挨拶。
  • ファリャ:バレエ音楽「三角帽子」全曲 前半のヤマ。およそ35分の大熱演。5曲目の途中でスプリンクラーが泣き出すほどの熱演。最後にもらった喝采の奥行きに涙が出そうになった。

<休憩> 事故処理のため結果として60分の休憩後、ニュルンベルク市長の歓迎の挨拶があって学校長の答辞が続く。

  • ショスタコーヴィチ:交響曲第5番「革命」第4楽章 あんな事故があったのに、何とか演奏会を続けられる喜びをのせた演奏。ファリャエンディングの勢いがそのまま持ち越された感じ。第2部いきなりのパンチ。スプリンクラーの落涙を正面から見る位置にいたティンパニの勝利の打撃で曲を終えると帰らなくて良かったとばかりの大喝采。
  • オルガン独奏 バッハ:「主イエスキリストよ我ら汝に感謝し奉る」BWV623
  • オルガン独奏 バッハ:「神よ我らを助けたまえ」BWV624 もちろん生徒の演奏。ホールに充満する響き。イスによじ登るようにたどりついた少女の堂々たる演奏。
  • 吉俣良作:篤姫のテーマ 和太鼓の力強いソロで始まるドイツ旅行バージョン。
  • 吉俣良作:江のテーマ 静謐なピアノ独奏で始まるが、これも第一ヴァイオリンの生徒でピアノとのかけもち。
  • マスカーニ:歌劇「カヴァレリアルスティカーナ」より間奏曲 冒頭いつくしむような第一ヴァイオリンの音色に目頭があつい。はっとして耳を疑うばかりの美音。ベタな表現ながらビロードのよう。途中でオルガンが重なったときの響きの厚みは比類が無い。この子らの本領は、ファリャやショスタコよりもむしろこっちかもと思わせる。表現の幅にただただ脱帽。
  • 高野辰之作曲、岡野貞一作詞「朧月夜」 指揮者の合図で管楽器の生徒が音も無くスックと立ち上がる。この所作の段階で、既に何かが伝わってしまった感じ。弦楽合奏つきの女声合唱だ。日本の歌っていい。ドイツ人は歌詞の意味なんぞわからハズなのに、打撃性の低いウエットな拍手。
  • 山田耕作作曲、三木露風作詞「赤とんぼ」 朧月夜と同じく生徒たちが歌う。こちらは新世界交響曲第2楽章にも似た金管の芳醇な和音も楽しめる。
  • 川手誠:「OKINAWA」 民族衣装を着た生徒7人がサンシンの伴奏で踊りを披露。舞台袖のコンミスを含む4名がサンシンを弾きながら、悠々と歌う。これに乗って踊り手7名がつばの広い帽子をかぶりうつむき気味に歩いて入場。時間の目盛りが今までの演奏とは完全に異質。AndanteだAdagioだという価値観とは隔絶したトーン。手に隠し持ったカスタネット風の打楽器の乾いた打音がキリリとした緊張感をかもし出す。踊り手の顔は見えない。かすかに口紅の赤だけがチラリと見え隠れする。最初と同じく時間をかけて袖に引っ込むと沖縄民謡に題材を求めた事実上の交響詩。今まで踊っていた7人が、一旦引っ込んだ後、民族衣装のまま持ち場に戻ってケロリと弾き始める。どうなることかと思ったら、総立ちのスタンディングオベーションが待っていた。左前方の男性が立ち上がったと思ったらまたたくまにほぼ全員が立ち上がった。座っているのは我々日本人だけみたいな感じ。

<アンコール>

  • 「オーメンズオブラブ」 ノリノリのポップオケに変身。フィギュアスケートのエキシビション演技のノリ。曲の途中で2人のサックス奏者が中央に躍り出てソロを吹く。ソロが終わるとペコリとお辞儀をしてやんやの喝采。一人が第一ヴァイオリン、もう一人がコントラバスに戻って弾き始めるとまたバカ受け。演奏後はスタンディングオベーションのお代わり。
  • 高野辰之作曲、岡野貞一作詞「ふるさと」 キレッキレ、バカ受けのあと、超しっとり系のしめくくり。各セクションのかわるがわる歌うバージョン。「いかにいます父母」のところは弦楽器が木管を伴奏に歌う。親はもちろん涙なのだが、1階3列目の在ニュルンベルク日本人の女性も泣いていた。
  • 鳴りやまぬ歓声を抑えて、指揮者が再びメンバーに向かう。優雅にタクトが下りると生徒たちが声を合わせて「Eins zwei drei!auf wieder sehen」と語りかけ、皆で手を振る。歓声が一旦爆笑に変わり、そしてすぐにスタンディングオベージョンが再開。ステージでは生徒たちどうしで握手とハイタッチが繰り広げられた。

もりだくさんの内容15時半の開演で19時終演。ここ1年かけてずっと磨き上げてきた曲ばかりで、日本でも何度も聴いたのだが、ドイツではまた格別な味わいがあった。子供らの演奏がどうというより、それを聴いたドイツ人の反応が感動的。その反応に子供らが乗せられてという相乗効果。それを親として体験できた私は幸せ者。私が親バカという論理では説明がつかないドイツ聴衆の反応。涙にくれる我々が生徒たちの保護者だとわかると、もらい泣きのドイツ婦人が手をさしのべて抱き合うという暖かな光景を実際に目の前で見た。

お開き後、生徒たちは楽屋に楽器をおいてロビーに出る。寄付のお願い。一人ひとりに手作りのフラワーアートを手渡す。同行の保護者も入り混じって笑顔の輪があちこちに。集まった寄付は、紙幣のみの速報値ながら日本円でおよそ130万円だという。

ここに私を導いてくれた娘に感謝。

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コメント

<festin_d_esope 様

ブラームスのお導きとはいえ、奇遇が重なります。
ドイツは素晴らしいですね。マイスタージンガーハレの「三角帽子」を生涯忘れることはありません。6月の公演の成功をお祈りします。

そんなことより夏にはクラ5ですとな。あれをお吹きになるとは只者ではありますまい。今更ブラームスのご加護なんぞ必要のない腕前と拝察いたしますが、今後とも「ブラームスの辞書」をよろしくお願い申し上げます。

アルトのパパ様

こちらこそ、今更ながら優しいお人柄とお嬢さんへの深い愛情が伺えるリプライをありがとうございます。
こちらのオーケストラのことをご存じ下さったようで、重ねて有り難く思います。

演奏旅行の記事を読んだときには、私も非常に驚きました。
加えるなら、私(ちなみに千葉県出身です)が6月の演奏会で乗ることになっているのが「三角帽子」というのもまた奇遇でしょうね。
夏の団内の室内楽発表会に五重奏Op.115の誘いを受けたのも、貴ブログのお導きかと思えてきます。

お嬢さん方の入魂の演奏を想いつつ、演奏会の成功をお祈りいたします。
それでは、長々と失礼しました。

<festin_d_esope 様

いらっしゃいませ。心温まるコメントありがとうございます。
ブログの管理人としても親としても舞い上がるばかりの内容です。

昔からの読者様が、偶然にも娘らの公演と同じホールで演奏していたなど、あり得ぬ奇遇です。貴オーケストラがドイツ公演で、娘たちに先立ってマイスタージンガーハレに出演することは存じ上げげておりました。クールな娘たちを差し置いて親の私が、「大学生に負けぬよう」などと力んでおりました。おかげさまでスプリンクラーを泣かすことが出来ました。(エッヘン)

管理人として最初の4行は極楽です。さらに長文のコメントだというのに、終始破綻のないゆったりとした文体から、暖かなまなざしと思いやりを感じさせてくれます。貴殿(貴女?)のお人柄ばかりかお吹きになるクラリネットの音色さえ想像出来ます。

心強いエールありがたくお受けします。集大成のコンサートを明日に控える子どもたちとって何よりの力になります。

ブラームスのご加護を。


はじめまして。
現在、大学のオーケストラでクラリネットを吹いている者です。
ブラームスは好きな作曲家の一人で、貴ブログは高校生の頃より愛読しております。

お嬢さんの学校と同じように、私たちのオーケストラも今年の2月から3月にかけて、ドイツとオーストリアに演奏旅行を行いました。
演奏地にはマイスタージンガーハレも含まれていました。
現地でそちらの演奏会のポスターを見かけ、「同志」の存在を心強く思ったのを覚えています。

演奏旅行は私にも大変貴重な経験になりましたが、それを高校のときに経験されたお嬢さんには非常に羨ましい思いです。
ブログを通して一方的に存じ上げていた方と同じホールで演奏できたことも何かの縁と思い、少し前の記事ですがこうしてコメントさせていただきました。

それでは、ますますのご健勝とご活躍をお祈り申し上げます。

<green様

いらっしゃいませ。暖かなコメントありがとうございます。
親として心強いばかりです。
今回の演奏会を裏から支えたメンバーには卒業生が
たくさん含まれています。
制服だけではない素晴らしい伝統が脈々と息づいていると
いつも感じさせられます。
そこに娘を通わせる私は幸せ者です。
今後とも「ブラームスの辞書」をよろしくお願いいたします。

はじめまして。
通りがかりに失礼します。
記事を読ませていただき、思わず書き込ませていただきました。

私の母校がニュルンベルグで演奏会を行うということで、昨年からずっと楽しみにしていました。

現在、ドイツで働いていますが、異国の地で母校の制服、そして在校生の活躍を見ることができて、大変感動しました。

本番は、ハプニングがありましたが、動じずに立派に演奏を成し遂げた姿は、ほんとにほんとにすばらしかったです。

卒業した自分の母校を誇りに思います。
魂のこもった演奏に感謝いたします。
そして、ますますのご活躍をお祈りいたします。


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