オルロフ侯爵夫人
1862年8月フランス駐在大使だったビスマルクは、南仏ピアリッツで休暇を過ごす。同地に保養に来ていたのが、ロシアのブリュッセル駐在公使オルロフ侯爵夫妻だった。休暇中しばしば夫妻とビスマルクは交流したが、美貌の侯爵夫人カタリーナに一目ぼれというのが真相らしい。このときビスマルク47歳カタリーナ22歳。
カタリーナは、ロシアのトルベツコイ公爵の娘で、達者にピアノを弾いたとされている。ビスマルクも彼女の演奏を聴いている。そのレパートリーは、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーンだったとされている。ここにブラームスが入っていれば万々歳なのだが、そうも行かない。ブラームスは当時ちゃきちゃきの現代音楽だろう。1862年といえば、第一交響曲はもちろん、ドイツレクイエムもハンガリー舞曲もまだ世に出ていない。ブラームスがレパートリーに入っていないほうが自然だ。カタリーナはロシア貴族の令嬢だ。貴族令嬢のたしなみとして幼少の頃からピアノに親しんでいて何の不思議もないが、ベートーヴェン、シューベルト、メンデルスゾーンとは端正なレパートリーである。ロシアもなかなかやるわいという感じ。
美人薄命とはこのことか、カタリーナは1875年に35歳で急逝し、その頃ドイツ帝国宰相の座にあったビスマルクは侯爵に哀悼の意を示したという。
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