バイエルン王の普仏戦争
普仏戦争の天王山ゼダンの戦いがプロイセンの圧勝に終わったとき、バイエルン王ルートヴィヒ2世は側近に「かわいそうなフランス」とつぶやいたという。フランスはもちろん、オーストリアやプロイセンからも独立を保つことを目指しルイ14世を尊敬する王の言葉としては自然とも感じるが後に精神病認定される原因の一つになった。バイエルン王国は、対仏戦不可避の空気の中で世論はプロイセンとの共同に傾くが、ルートヴィヒ2世は戦勝後プロイセンによるバイエルンの扱いを憂慮していた。ゼダンの勝利を祝う日に彼はミュンヘンの街にプロイセンの国旗を掲げることを禁じようとしたほどだ。
彼の母マリーはプロイセン王家ホーエンツォレルン家の出身。その母が統一ドイツの皇帝について話を持ちかけようとしたとき、ルートヴィヒ2世は実の母に対して「今プロイセンの王女と謁見する気になれない」と言って会うことを拒否した。この母子はずっと関係が悪かったから「どうせ実家のウィルヘルム1世が即位するという話だろう」と考えたに違いない。ルートヴィヒ2世のプロイセン嫌いの根底にはプロイセン出身の母との確執があった。このエピソードは王が狂っていない証拠とも思える。
狂っていない証拠をもう一つ。ルートヴィヒ2世は、「この次の戦争がドイツを壊すだろう」といった。プロイセンへの対抗意識を忘れ対仏戦勝利に酔いしれる世論の中にあっては浮き上がったコメントだが、それこそがビスマルクの思う壺であると気づいていてこその発言。ドイツが普仏戦争を最後に対外戦争に勝てていない歴史を見れば、この発言はむしろ慧眼と呼ぶべきものだ。
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