路易二世
ルートヴィヒ2世の漢字表記だ。森鴎外の「独逸日記」に出現する。鴎外が留学生としてドイツに滞在していた頃、バイエルン王ルートヴィヒ2世が謎の死を遂げる。鴎外はこのニュースをミュンヘンで聞き衝撃を受ける。その後シュタルンベルク湖を何度か訪問し、1887年9月2日にはルートヴィヒ2世を偲んで漢詩を詠じている。
当年の向背群臣をおどろかす
末路の凄愴鬼神を泣かしむ
功業の千秋は且く問うを休めよ
多情は偏に是詩人を愛すればなり
意味はおおよそ以下の通り。
病を得て国王の最近の言動は側近を驚かせている。
その末路の凄惨さには鬼神も涙を流すほどだ。
国王の積年の功罪について問うのはしばらくやめよう。
築城やワーグナーに入れ込んだのはロマンチストの証である。
最後の一行は超意訳だ。
見ての通り、「路易」は「ルートヴィヒ」を正直にトレースしていない。むしろ「ルイ」である。ルートヴィヒはフランス名ルイのドイツ語形だということを鴎外は知っていたに違いない。もしかするとルートヴィヒ2世が、フランス太陽王ルイ14世を尊敬していたことも念頭にあったのではと思わせる。
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