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2012年7月16日 (月)

お盆のファンタジー12

どうもCDを聴いてからというもの、ブラームスとビューローはしきりにひそひそ話をしていていた。昨晩になってブラームスは「ニュルンベルク2曲目のアンコール曲はいったい何と言う曲か?」と尋ねてきた。「ふるさとという歌で、大抵の日本人は知っている」と答えると、ビューローが「テキストの大意は?」と畳み掛ける。「幼い頃走り回った野山を懐かしむ歌」「同時に両親や友人を懐かしむ歌」「立身出世を遂げた後戻って来たいと願う歌」と要約すると2人とも深々とうなずく。

「1914年頃の作品で、高野辰之作詞、岡野貞一作曲と言われています」と次女が付け加える。ブラームスは目を丸くして「よく勉強しているね」とほめる。「私たちの学校の校歌もこの二人の作品です」と自慢げな次女だ。当日はオケのメンバーがかわるがわる合唱するバージョンですとさらに補足。ブラームスは真顔になって「楽譜はあるの?」と尋ねる。「はい」と答えた次女はブラームスが「見せてくれ」と言い終わる前に嬉しそうに自室に上がってゆく。とって返した次女はセカンドヴァイオリンのパート譜とスコアを差し出す。案の定ブラームスはスコアを手にとって、またビューローとひそひそ。

やがてブラームスは遠くを見つめるような表情で、「あのニュルンベルクのコンサートで、初めて聞くドイツのご婦人たちが何人も涙を流していた」「初めて聴く曲なのに心に染みた」「一度聴けば忘れないシンプルで格調高いメロディ、端正な形式、絵に描いたような有節歌曲、どれをとってもローレライや菩提樹に匹敵する」とつぶやいた。

「ふるさとを主題に何か変奏曲でも」と私。娘たちのオケに「ふるさとの主題による変奏曲ヘ長調op123でもお願いしますよ」と、軽口をたたいたが、ブラームスは少し考えてから「いやいや、それは僭越だ」と大真面目。「むしろ、簡単で気の利いた和音を付けた歌曲か、声部の少ない女声合唱くらいがいいだろう」と答える。モラヴィア二重唱の中に入っていても全く違和感がありませんねとはビューローの感想だ。

次女が思い余ったように「その楽譜差し上げます」と申し出た。ブラームスは少し間を置いて次女をまじまじと見つめながら「楽譜は大事にしなければ。簡単に人にあげてはいけないよ」と諭す。

いつもおとなしい次女が、キッパリと反論を試みる。「志を果たして」という3コーラス目のテキストは、まさに私たちの気持ちそのままでした。長い間準備してきたドイツ公演の最後の演目だとみな知っていたからとりわけ心をこめました。そして「いつの日にか帰らん」と続いて、間もなくの帰国を暗示しているかのようです。スタンディングオベーションのお代わりには本当に涙が出ました。

だからやっぱり差し上げます」と一歩も譲らない次女。ブラームスはまた遠くを見つめる目になって「ああ伝わったとも」「古くから歌い継がれていた曲は、必ずオーラを持っているものだ」と自分に言い聞かせるようにつぶやく。

ブラームスは少し間をおいて「何かお礼をさしあげなきゃね」と次女の手を握った。

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