欧州情勢の分析
鴎外の「独逸日記」にはビスマルクに言及した箇所がもう一つある。1887年2月13日の記事だ。ここは当時欧州列強を取り巻く情勢が鴎外の視点で語られている。ブルガリアをめぐるバルカン半島の情勢は「露墺の間穏ならず」と表現し、フランス陸軍大臣が「暗に独逸の隙を窺う」という。ドイツでは、平時の軍備増強が国会で紛糾し、ビスマルクと中央党ヴィンドホルストの対立から、ビスマルクが国会の解散に打って出た。ローマ法皇においては「加特力(カトリック)教徒がビスマルクの意に従わざることを謀れり」とある。
ドイツ帝国周辺の欧州の情勢が手際よくまとめられている。
この文中にドイツ帝国皇帝ウィルヘルム1世に言及がある。「維廉帝」というのがそれだ。独逸日記にはウィルヘルム1世への言及が意外に少ない。この後鴎外帰国寸前に崩御の記事があるばかりである。
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