モルトケ演説
岩倉使節団の報告書ともいうべき、「米欧回覧実記」には1874年2月のモルトケの議会演説が引用されている。歓迎レセプションでのビスマルクの演説が記述されるのは当たり前だが、1873年9月には帰国しているというのに、帰国後半年も過ぎたモルトケの演説内容が要約されているのは異例だ。
モルトケの演説を要約する。
- 国家たるもの、単に倹約につとめ租税を減ずることに汲々とするな。
- 歳入は国の急務にあて、常に国家の威勢を海外に発するよう務めよ。
- 法律、秩序、自由などは国内を治めるには良いが、海外を治めるのは兵力と心得よ。
- 万国公法を遵守するのは小国のすることで、大国は国力に物を言わせる。
- 昨今の情勢は平和維持が難しい。一旦隣国と事あらば迷わず攻めよ。
- ただし、それは単に勝利への渇望とせず、平和を欲すればこそであると諸国に示せ。
- ドイツこそが欧州平安の守護者であることを広く知らしめよ。
- その実力を維持するための軍備である。
ビスマルクの演説をさらに細かく読み下したという感じ。だからわざわざ回覧実記に引用したのだ。欧州の中央に鎮座するドイツの強大な兵力が、抑止力になるというのだ。その軍事力を背景にビスマルクは外交に邁進する。対露友好を柱に、フランスの孤立を図り、間接的に独英同盟を構築したことにより、結果として1871年以降第一次大戦までの平和を生み出した。
日本はこれをドイツに代わってアジアで実現しようとしたようにも見える。
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