右翼
本隊の右側に配置される部隊のこと。本来軍事用語なのだが、様々な場面で使われる。
部隊の進行方向から見て右側という概念なのだが、野球では逆になっている。右翼手は守備側から見た左側に置かれる。攻撃側から見ての右だ。近代野球では、三塁送球のニーズから左翼手よりはポテンシャルが高いと目される。
アメリカンフットボールの守備陣。攻撃側と対峙する最前線のラインマンのうち、右側の端に強力なパスラッシャーをおく。敵側パス攻撃の肝クォーターバックの死角から殺到出来る位置に最強の刺客を配置する狙いだ。クォーターバックが右投げであることが前提の措置で、これまた右翼優先。
シュリーフェンプランの考案者、シュリーフェン伯爵の最期の言葉を思い出すといい。「我に強力な右翼を与えよ」だった。伝説的な逸話で事実かどうかにはなお用心が必要だが、これがまことしやかに伝えられているのには理由がある。シュリーフェンプランは1ヵ月半でフランスを屈服させることが主眼になっている。ベルギー国境に横長に配置した部隊が、パリを目指して一斉に行軍する。パリを陥落させた後、急転してライン川を目指すという代物。ルクセンブルクを中心に反時計回りにフランス領内を蹂躙するという主旨からして、大外に配置する部隊の移動距離が最大となる。横長配置の最北端つまり全軍の右翼がこれに耐える部隊であることが求められる。
クラウゼヴィッツの名著「戦争論」の中にも右翼が現れる。18世紀前半まで戦場に移動中、騎兵たちは歩兵の右翼に付き従うと書かれている。この右翼のことが「名誉ある位置」と形容されているのだ。理由が書かれていないのが残念だ。そういえば「最右翼」といえばしばしば第一人者を意味するほめ言葉だった。
ここにきてオーケストラを思い出す。オーケストラの右翼最前線は第一ヴァイオリンだ。オーケストラの楽器配置は、地域により時代により少しずつ違うのだが、第一ヴァイオリンの位置だけは共通している。右翼を名誉ある位置とする行軍の伝統がオーケストラの配置に影響を与えたなどということはあるまいな。コンサートマスターはいつもオケの右翼に陣取る。
<品川さま
重ね重ね貴重な情報ありがとうございます。
左利きばかりを揃えた連隊でも作って左翼に置いてみたくなります。
投稿: アルトのパパ | 2013年3月12日 (火) 17時43分
世界的にみて、右利きの方が多いと言います。そのため、一定の集団行動が必要な、或いは、多数へ同時に教授・訓練する場合、効率や動作の制限から、左利きは何らかの矯正を受けてしまうようです。
投稿: 品川 | 2013年3月11日 (月) 21時10分
<品川さま
またしても貴重な情報ありがとうございます。
右利きが多かったということでございましょうか。
投稿: アルトのパパ | 2013年3月11日 (月) 16時14分
なんだか過去記事へ突っ込みを入れる、嫌みな人みたいですが、またまた失礼します。
右翼を名誉としたのは、古くギリシャのファランクスが、左に盾、右に槍を持つ故に最右翼が敵へ身を曝した事に由来すると説明されます。
投稿: 品川 | 2013年3月11日 (月) 11時08分