ゴート人の港
戦艦ビスマルク初陣の際、出航に先立って「ムシデン」が演奏された話で思い出した。
出航の港は現ポーランド領グディニアだ。グダニスクの北北西およそ40kmの位置にある。ドイツ海軍の誇る巨艦ビスマルクは、ハンブルクで竣工した後、キール運河を抜けて東海を航行してグディニア周辺で訓練を行った。大軍港キールやヴィルヘルムスハーフェンではなかった。英国艦隊と雌雄を決するためには北海あるいは大西洋に出ねばならないから、素人目には無駄な動きにも見えるのだが、ちゃんと理由があった。キールやヴィルヘルムスハーフェンでは、英国空軍の空爆の射程に入ってしまうということだ。キールよりもおよそ800km東のグディニアまで、英国の爆撃機が飛んで来れないからだ。
さてこのグディニア、ポーランド語だ。プロシア領となって以降、一時グディンゲンと呼ばれたものの、1939年ナチスのポーランド侵攻以降、ゴーテンハーフェンと呼ばれていた。「Gotenhafen」と綴る。ビスマルクの訓練のわずか2年前だ。「ゴート人の港」の意味でよかろう。スウェーデン南部からポーランドにかけてのバルチック海沿岸は、ゲルマン系の氏族ゴート族の故地といわれている。イェーテボリやゴトランド島などの地名に痕跡として残っているのだが、ゴーテンハーフェンの命名もゴート人を意識したものと思われる。
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