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2012年12月25日 (火)

クリスマスプレゼント

楽章を2小節単位でくくることから得られる大きな4拍子という枠組みの中で、2拍のズレを楽しむのが中間部トリオであると一昨日書いた。

同じく実質4拍子の枠組みの中で、1拍のズレを楽しむ場所もある。第三主題がそれ。23小節目アウフタクトだ。曲中初めて全楽器が同時に鳴る場所でもあるし、最初のフォルテシモでもある場所。大きな4拍子で見ると4拍目から始まるのだが、アウフタクトの4拍目が主調・ハ長調の和声を持っている。続く23小節の1拍目はヘ長調になっている。和声的にはハ長調の和声を持つ4拍目が強拍に聞こえるのに、拍節的には4拍目になっているというズレ。さらに26、27、28小節において2拍目に「fz」が付与されているから、1拍ズレているという錯覚に陥る。広い意味でのシンコペーション。

全体を4拍子ととらえることで、シンコペーションの効果が増幅される。そういう意味では、この度のフォルテシモが始まる前の4分休符がとても大切だということが判る。全パート4分休符にすることで、続く爆発が強拍か弱拍かを判りにくくしている。同じ場所が再現される109小節目では、ここに4分休符があてがわれないことから、1回目において拍のはぐらかしが意図されたと判る。

次女たち「ふくだもな五重奏団」がブラームスのピアノ五重奏に挑むと聞いたとき、嬉しいの次に頭によぎったのが、「ピアノ誰弾くの?」だった。トップ奏者が集まれば、弦はどうにかとは感じていたが、ブラームス室内楽のピアノは、一筋縄では行かないと思ったからだ。いつもはコンサートミストレスの隣で弾いているヴァイオリン奏者が、そのピアニストだとわかったとき、疑問は解けた。ドイツでオルガンを披露したほどの腕前。そして何より左利き。これは理屈抜きに応援せねばと思った。ブラームスのピアノ入り室内楽で何が難しいといって、みんな苦労するのがバランスだ。とりわけライブでは難問だ。シェーンベルクがブラームスのピアノ四重奏をオーケストラ編曲した理由の一つに挙げているほどだ。曰く「ピアニストが達者であればあるほど、弦楽器がかき消される。」「かといって達者なピアニストでないとピアノパートが様にならない」「だから正しいバランスで聞かせるために管弦楽に編曲した」と。頼りはフタの開閉度というオチも珍しくない。ピアノに張り合っても音をつぶさない弦楽器と、弦楽器との間合いを読んで匙加減出来るピアニストが必要だ。

高校オケの弦楽器トップ奏者に囲まれてブラームスの室内楽に挑むのが同じ高校生のピアニスト。そのメンバーに娘が加わっている。これがどれほどの至福かご理解いただけるだろうか。

昨日次女たちオーケストラ部のクリスマス会があった。時期的に見て一年の労をねぎらう忘年会のノリもあるにはあるのだが、まだ年内にオーケストラフェスタがあるからその面では壮行会だ。そしてブラボーの練習も少々。

終盤間近のビスマルク特集を延々とさえぎって、10本もピアノ五重奏ネタを連ねたのは、ブログ「ブラームスの辞書」からメンバーへのクリスマスプレゼント。そして何やらブラームス風な遠まわしのエール。お気づきの通りこのたびカテゴリー「250 ピアノ五重奏曲」を新設して関連記事を集約する。

とはいえこの一連の記事が、乙女たちのはばたきを妨げる小さなカゴにならないことを祈るばかりである。ブラームスのご加護を特盛で。

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