トリオの帰結
242小節目でトリオが8分の6拍子に復帰し、トリオ主題の三現が始まる。チェロ以外の弦楽器はみな最低弦を用いる音域。ここしばらくは「sul G」でお願いしたいところ。低音域好みのブラームスならではの節回し。調はドッシリとしたハ長調でめでたしめでたしなのだが、ピアノを見るとありゃりゃと驚く。
右手は「C音」のオクターブなのだが、左手は「B♭音」のオクターブになっている。半音の衝突ほどではないが、少し気になる間合い。この後ずっと2度ないしは短3度の差を維持したまま、ゆるやかな下降を続ける。けして同じ音には収束しない。無理してコードネームで申せば「C7」の第三展開形か。となると目指すは「F」かとも早合点する。実際246小節目には「F」が現れるのだが、右手が「H音」にズリ落ちてしまい、和音「F」が確定しない。左手が少しだけ右手に先行してジリジリと下降を繰り返す。ひょっとしてこれが「繋留」かも。
右手が「As音」から半音下の「G音」に移るところで、鬼ごっこは終わり、左手はやっと「C音」に落ち着く。
旋律はどっしりと輝かしいハ長調なのに、下支えのピアノがこの有様だから、全体としてはどこか置き去り感がある。そうだ。ここはトリオの終末部。トリオ単体としてはハ長調に戻ってきたことで大団円なのだが、曲全体としては冒頭スケルツォ主部への回帰を準備する場所でもある。旋律をもってトリオの帰結を暗示しながら、背景ないしは下支えのピアノだけは主部への回帰を模索しているという凝った作り、実はブラームスならでは。
« まったりの仕組み | トップページ | クリスマスプレゼント »
コメント