紛れ込んだ1小節
昨日の続き。ブラームスのピアノ五重奏の第3楽章スケルツォが実質4拍子という話題。スコアをお持ちの方はいよいよ是非御手許に。
楽章が実質4拍子で、2小節一組にくくって考えると、いろいろと面白い。だから演奏にあたっては、パート譜にマーカーペンで2小節ごとに印をつけるといい。「奇数小節の前」「偶数小節の後」にマークする。「12」「34」「56」「78」とい具合に「奇数+偶数」で大きな4拍子が作られる。けれどもこれがトリオまで貫かれているからといって、機械的にホイホイ印をつけると痛い目にあう。
13小節目から始まる「タッカタッカタッカタカタカ」は見事に4拍子にはまる。16分音符が4つで構成された4拍目のおかげで「4→1」という拍節感が強調される。ところが同じ旋律の再現158小節目練習番号Dを見るがいい。「偶数小節→奇数小節」になっている。さっきと逆だ。どこで狂ったのだろうとばかりに探しあてたのが75小節目。(下図、丸囲み)
67小節目から始まるフガートの中だ。ヴィオラに4小節(つまり大きな4拍子2個分)遅れて旋律を引き継いだピアノ4小節の次の75小節が半端の原因。4つ振りで感じるなら「1234」「34」「1234」に聞こえる。次に旋律を受け継ぐ第一ヴァイオリンは76小節目から立ち上がって以降、「偶数小節+奇数小節」で大きな4拍子を構成するようになる。ヴィオラとピアノ以外の奏者はお休みで、小節をカウント中。4拍子のノリでうっかり数えているとここでズレるから、休んでいる人たちにこそ必要な豆知識。
マーカーペンで機械的に印を付けられるのは「73小節と74小節」のくくりまでで、75小節を浮いた1小節とみなして「76小節と77小節」をひとくくりにする。以下「78+79」「80+81」と続く。4分の4拍子の音楽に1小節だけ4分の2拍子が挿入される感じだ。
楽章冒頭チェロのピチカートソロ4発で、実質4拍子を宣言しておきながら、途中にこうした意地悪をしのびこませるブラームスのひねりだ。
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