Feuchtwangen
ロマンティック街道の白眉ローテンブルクの南南東およそ25kmにある街。カタカナで無理やり標記すれば「フォイヒトヴァンゲン」くらいか。スイスにある「Kussnacht」に匹敵する美しい名前だ。語尾「wangen」は「頬」という意味「Wange」の複数形。「Feucht」は「湿った」あるいは「濡れた」という意味の形容詞。直訳なら「濡れた頬」とでもなるのだろう。「wangen」は人の頬状に緩やかな弧を描く様子の表現とも映るが、「野」(feld)を指すフランケン地方の方言とも言われている。
頬が濡れるとなるとおそらくその原因は涙。「頬伝う涙」を想像してしまう美しい語感であるばかりか、ローテンブルクに劣らぬとっておきの街並みでもあるという。
頬伝う涙。
昨日、次女たちふくだもな五重奏団が、コンクール本番の舞台に立った。同行した母も私も涙。亡き妻との結婚当初の目標「家族でブラームスのピアノ五重奏を演奏する」の代わりに神様が用意した手の込んだ答え。当初の予定は以下の担当。
- ピアノ 妻
- 第一ヴァイオリン 長女
- 第二ヴァイオリン 次女
- ヴィオラ 私
- チェロ 長男
この目論見からはまず最初に妻が離脱。長男がチェロなんぞに見向きもせずに、はなからフェードアウト。かろうじてヴァイオリンを習わすことに成功した長女もやはりバドミントンに走った。残ったのは私と次女だけ。子どもたちの未来の配偶者や私の孫をあてにするにしても、目標の達成は相当苦しかった。唯一残った頼みの綱の次女が、高校オケの門を叩いたところから、逆襲が始まった。コンクール挑戦にあたり仲間と選んだのが他でもないブラームスのピアノ五重奏、しかもストライクゾーンのスケルツォだった。次女が当初の計画通りの第二ヴァイオリンだったのは最早奇跡の域。昨日当初の予定以上の完成度で妻との約束を正式にコンプリートした。サンクスふくだもな。
昨日流された幾筋かの涙のために。
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