無塩
「無塩」と申せば「本来塩の含まれるものから塩分が抜かれた状態」を指す言い回しと解して間違いあるまい。「無塩バター」などよく見かける。塩は人体に無くてはならない成分であると同時に料理の味付けの基本でもある。「塩梅」などの言葉からもうかがい知れよう。
森鴎外の「独逸日記」に興味深い記述を発見した。
1885年8月28日。ザクセン軍の演習を見学した鴎外はこの日ネルハウという街に入る。その夜「村劇」を観た。村の演劇というニュアンス。これに出演した女性について鴎外が述べる。
「皆無塩なり」
無残な注がふられている。曰く「容姿の醜いこと」だと。鴎外の造語ではなくて、れっきとした中国古典からの引用だ。塩抜きが味気なさに連なり、そこからの類推でと無理やり解釈してはならない。出典は中国の地名らしい。
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