接吻の夜
おかしなタイトルだ。スイスに「Kusnacht」(uはウムラウト)という地名がある。「kus」は英語でいう「kiss」で、「nacht」は「夜」、合わせて「接吻の夜」とでも解したい。「接吻」の意味だとするなら「kus」の「s」は重複させねばならないが野暮なことは言いっこなしで。
スイス・チューリヒ湖畔の街で、くつろぎまくるブラームスの様子がフェルデナント・ポールの手紙からも読み取れる。それにしても美しい地名だ。「nacht」(夜)が語尾に据えられた地名というのもたいそう珍しい。
物珍しさにいろいろ調べているとお宝情報に出会った。グリム兄弟が著した「ドイツ伝説集」下巻の518番「ウイルヘルムテル」だ。ロッシーニのオペラでも名高いあの話だ。言いつけの通り我が子の頭上のリンゴを射落としたというのに約束を守らない代官から、ウイリアムテルが逃げる。夜通し走りに走ってたどり着いたのが湖畔の街「キュスナハト」とされていた。
さてチューリヒ湖畔のキュスナハトから南西に30kmくらいのところにも「キュスナハト」がある。ルツェルンの東10km。こちらは嬉しいことに「Kussnacht」だ。「s」が重なる正真正銘の接吻だ。
« 瀬を早み | トップページ | お盆のファンタジー15 »
コメント