塩の王子
皇帝フランツ・ヨーゼフ1世の母はゾフィという。彼女は結婚後6年間、子宝に恵まれなかった。侍医ヨハン・マルファッティは、ベートーヴェンの最晩年の治療にも関与した人物。彼は子宝が授かるようにと塩水療法を勧めた。最初の療養はハラインという場所。Halleinと綴るのだが、冒頭の「Hall」は古ドイツ語で「塩」を意味するそのものズバリの地名だ。
ところが、ここでは効果が出ず、次に赴いたのがバート・イシュルだった。これがまんまと的中してその後5人の子に恵まれた。このうちの最初の子が皇帝のフランツ・ヨーゼフ1世その人である。だからウィーンの人々は親しみをこめてフランツ・ヨーゼフを「塩の王子」と呼んだ。
さて、23歳の皇帝は見合いのためにまたイシュルを訪れた。本来の見合いの相手には見向きもせず妹のエリザベートに一目惚れしたことは、あまりにも有名だ。イシュルは皇帝にとって縁起のよい場所だということだ。だからカイザーヴィラという別荘を建ててしばしば夫婦で訪れた。
そう、ブラームスもしばしば夏の避暑地に選んだあのイシュルである。
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