塩水泉マーカー
「Bad Ischl」はブラームスの伝記で山ほど言及される「イシュル」のことだ。ブラームス晩年のお気に入りの避暑地で、夏にはオーストリア中の名士が集まるリゾート地だった。ここを流れるトラウン川を遡ったところにあるAussee湖畔に、古くから利用されてきた塩水泉があった。ここから湧出する塩水がイシュルまで延々と木管で運ばれて、大きな窯で煮詰められて塩を製造した。さらにイシュルにも昔塩水泉があったらしい。塩分の濃度が下がったために、採算が取れなくなり、製塩業は廃れたが、景色がいいことが助けとなり、塩分含みの温泉としての効能も謳われて、大保養地になったということだ。食塩を含有する温泉は日本でも珍しくない。
ドイツ語で「Bad」は「温泉」を意味する一方、その昔製塩業が栄えていた場所である可能性はいつも心に留めておきたい。
さてもう一つ塩水泉マーカーの可能性を持つのが「brunn」や「born」である。通常は「泉」と解されているが、淡水が湧いているとは限らない。製塩地名の中に「brunn」や「born」も散見される。塩分を含む湧き水の温度が高ければ「bad」となり、低ければ「brunn」や「born」と呼ばれ得ることは確実だ。
塩不足に悩んだプロイセンやザクセンあるいはスイスでは、塩鉱脈の探索技術が発達した。ボーリング技術がその代表だが、どこを掘るかについては、表土の観察の他、地名や伝承も大いに参考にされたと思われる。
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