ingen
ブラームスの元婚約者アガーテはゲッティンゲン大学の教授の娘だった。第4交響曲はマイニンゲンで初演された。これらの街の語尾には「ingen」がある。「ingen」は「だれそれの支配地」という意味がある。「ingen」のつく地名はドイツ南部、あるいは西部にとりわけ濃密に分布する。「ラインの西」「ドナウの南」に特に多い。
これらの土地が開かれたのは西暦紀元前後のドイツ史としては古い時期だという。古くから開けた肥沃な土地だということだ。おおむね人の住みやすい場所であったと言われている。
現フランス領アルザス・ロレーヌ地方は古来独仏両国の領有争いの場だった。ドイツ領であるときは「エルザス」「ロートリンゲン」と呼ばれていた。フランク王国を分割相続した3兄弟の長兄がロタールだった。彼は中央フランクを相続した。だからのその地域をロートリンゲンというと説明されている。
このことからも判るとおり、地名語尾「ingen」は、人名に付与されることにより土地の所有を表すことになる。土地の所有者はいつの時代も大きな関心事だ。だから地名になりやすいとも言えるが、地名語尾「ingen」の分布は奇妙だ。エルベ川とザーレ川を結ぶ線より東に出現しないのはよくあるケースとしても、ヘッセン州とテューリンゲン州付近が分布の空白になっている。そしてその外周とりわけラインの西とバーデン・ヴュルテンベルク州に巨大なコロニーがある。
これが不思議なものでバイエルン州に行くと末尾の「en」が脱落して「ing」になる。空白地だったヘッセン州とテューリンゲン州付近では「ungen」になり、エルベの東では「in」、ノルトラインやニーダーザクセンでは「um」に取って代わられると感じる。土地の所有を意味する語彙が空白ということはあり得ない。
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