森の分類
「森」という漢字の成り立ちを見るだけで「木」の集合だと判る。木が集団で繁茂する場所だ。日本語でもヴァリエーションがある。「林」「木立」「茂み」などだが、森の国ドイツではさらにたくさんの言い回しがあり、それらが地名語尾に反映している。本日はそれらを列挙してみる。
- bog ブランデンブルク州「Juterbog」。デンマーク語で「ブナ」の意味がある。
- bok シュレスヴィヒホルシュタイン州「Ahrensbok」。スウェーデン語で「ブナ」の意味がある。
- buche ドイツ語でブナの意味がある。
- busch 北部ドイツに5箇所あるが木の集合というにはやや無理か。
- forst これといった特色も無く3箇所。「wald」は原生林だがこちらは「人の手が入った森林」という感じ。英語の「forest」に通じる。
- gau 33箇所。中央ドイツを空白にしたドーナツ型分布。「水辺の森林」の意味だが、ゲルマン人の土地統治単位だったという説もあるので要注意。
- hag 森、木立。地名語尾「hagen」の一部はこちらに起因するのではとも思う。
- hain 「gau」の空白区を埋めるようにも見える。中央ドイツに39箇所。「囲いのある林」の意味。
- hau 3箇所。森林の中の伐採区を指す。
- heide 荒地・原野を指すが、未開墾地という意味では森をも含む。森が乱伐された結果としての荒野でもある。
- hoe シュレスヴィヒホルシュタイン州「Jurrishoe」1箇所。
- holz 丸太。森そのものとはいえないが密接不可分。
- horst ザクセンアンハルト州を南限として北部に集中。「forst」からの転訛か。
- loh 12箇所が北部に分布。ザクセン神話の「聖林」に相当する。
- lohe もちろん「loh」と同一で5箇所。
- lohn これも「loh」の変化形で3箇所。全てニーダーザクセン州。
- tann バーデンビュルテンベルク州「Buhlertann」1箇所。「樅の木」あるいは「鬱蒼たる森林」の意味。
- tanne ザクセン州「Lichtentanne」1箇所。
- thann 3箇所全てバイエルン州。もちろん「tann」の変形。
- wald 43箇所。ほぼドイツ全土。原生林でとりわけ山に近い意味もある。
- walde 36箇所。原則として北部。エルベの東に分布するが無視しえぬ例外もある。申すまでも無く「wald」の変形。
いやはや多彩。「開墾地」の16箇所を上回る。ブタの放牧地でもあり薪の供給元でもある。人々の生活になくてはならない森だからその土地ごとに言い回されてきたと判る。
コメント