開墾地
土地の所有が人々の関心事だったことは容易に想像出来る。けれどもその土地が単なる荒地では意味が無い。耕作適地であることが大切だ。そこからの収穫物こそが富の源泉だからだ。もちろん牧草地でもいい。戦争は悩ましい。勝てば所領が増えるには増えるが、負けるリスクだってある。戦争あるいは相続に頼らずに所領を増やすのが開墾だ。開墾によって新たに獲得した土地が、旧来の農地と区別されることは自然なことだと思う。だから「開墾地」を意味する地名語尾が以下の通り多彩に分布する。愛用の道路地図の索引に現われる回数も添えておいた。
- rade 17箇所 エルベの東に集中。
- rath 47箇所 ラインの西に分布。
- reut 5箇所 バイエルン州にある。
- reute これも4箇所がバイエルン州だ。
- reuth 27箇所。ドナウ以北のバイエルン州に集中する。ワグネリアンの聖地「Bayreuth」が特に名高い。
- ried ドナウ以南のバイエルン州に29箇所。
- riede バーデンビュルテンベルク州「Burgriede」1箇所。
- rod ヘッセン州のライン北岸だけに17箇所。
- roda 31箇所がテューリンゲン州とザクセンアンハルト州に集中。
- roda 「o」にウムラウト。テューリンゲン州の「Grafenroda」1箇所。
- rode ザクセンアンハルト州に76箇所。
- rodt 7箇所のうち6箇所がラインの西。
- rot 4箇所全てバーデンビュルテンベルク州。「赤」ではない。
- roth 48箇所中ほぼ9割がラインラントプファルツ州。
- rott 地名語尾としては2箇所がシュレスヴィヒホルシュタイン州にあるが。「Rott」単独では南部にもある。
- rotte ザクセン州「Morgenrotte」1箇所。赤と解して「朝焼け」と読みたくなるが現実的ではあるまい。デンマーク語で「rotte」は「ネズミ」の意味でもある。
子音「r」で始まり、「d」または「t」で終わるという2音節というパターンが美しい。漫然と使われているのではなくて地域により棲み分けが起きている。同地区に重複分布しているのはさらに時代による区別があるかもしれない。みんな開墾地に関心があるということだ。
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