止めたい時間
昨日、次女の高校オケの第20回スペシャルコンサートがあった。2年間夢中で登り続けた末のゴール。娘が高校オケに入るなどという極上の事態を味わいつくした2年間の集大成。頂上で見えた絶景に言葉を失った。私がブログで事前告知をしたからかどうかわからぬが、天気にも後押しされて、1475名収容の会場がほぼ満席になった。足をお運びいただいた全ての方々に御礼申し上げます。
<第一部>
- (1)マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より前奏曲
- (2)マスカーニ作曲 歌劇「カヴァレリア・ルスティカーナ」より間奏曲
- (3)プッチーニ作曲 歌劇「ラ・ボエーム」よりムゼッタのワルツ
- (4)ハチャトゥリアン作曲 「仮面舞踏会」
- (5)リスト作曲 交響詩「レ・プレリュード」
- (6)ホルスト作曲 組曲「惑星」より火星 OGオーケストラ
- (7)ホルスト作曲 組曲「惑星」より木星 OGオーケストラ
<第二部>
- (8)「八重の桜」
- (9)ディズニープリンセスメドレー
- (10)「レ・ミゼラブル」メドレー
<第3部>
- (11)ボロディン作曲 交響曲第2番
<アンコール>
- 卒業演奏
- ラデツキー行進曲
何と幸せな子どもたちなのだろう。子どもの幸せを願わぬ親はいない。乙女たちの幸せそうな姿をただただ、見つめた濃密な3時間。この若さでこういう音楽の世界に身をおけた幸せは、傍で見ていても明らか。「メンツ」「曲」「気合」音楽の3要素が全て高い水準で揃った彼女らだけのワールド。
今回は第20回という節目のスペシャルコンサートということで、同校オーケストラ部創設にとりわけ深く関わった先生をお呼びして上記の(2)と(3)を指揮いただいた。レジェンドとも申すべき先生の指揮で、これまた同校オーケストラ部出身のソプラノ歌手のとの競演が実現した。過去の功労者への敬意はオケの土台を強化する。
前半のヤマ何と申してもリスト「レプレリュード」。大人が勝手に思い描く限界の斜め上を行く出来。意欲とテクニックが高い水準でバランスした演奏だった。力任せでない丹念な音作りなのだが、はじけっぷりも半端ではない。何より感じるのはオケの推進力。メンバー全員が同じ星を見ている。一言で申せば「横綱相撲」。
シリアスな作品でディズニー、大河ドラマ、レミゼラブルというポピュラーを挟み込むというプログラミングも練り上げられたものだ。どれも丹念に細部まで作りこまれた演奏。
ラストには満を持すボロディン。彼女ら36代は震災の影響で部員が極端に少ない。当人たちの努力や能力以前のハンデを抱え続けた2年間だった。上の代と下の代に支えられ、そこをウィークポイントにしない決意で乗り越えてきた。第一楽章は、そうした乙女たちの気概に満ちた演奏だった。いったいどれだけの人が、そのハンデを感じただろう。
4楽章が始まった時、「時間よ止まれ」と思った。娘らのオケ部現役が終わってしまうという思い。娘がこの中にいるというだけで満足で、娘がどうのという感慨はとっくに消し飛んでいた。みんな丸ごと真空パックにでもしたい感じ。言葉になんかならないのを無理やり文字にしている。どう単語を組み合わせても塗り残す。
演奏後、引退する36代3年生全員を顧問指揮者がステージ上でねぎらう儀式、通称「ハグタイム」に突入。指揮者がメンバーをかき分けるように全員のそばに立ち寄り、あるものにはハグ、あるものには手を取って上に掲げる。3年生たちは涙、涙、涙。その間もちろん万雷の拍手なのだが、そこでサプライズ。かすかに音楽が流れてきたのだ。スピーカーを通じてなのかと思ったら3年生を取り巻くように配置していた37代2年生が、「メモリー」を生演してくれていたのだ。もちろん指揮無しで、泣きながら弾いてくれている2年生もいる。ブラボー100回分に匹敵する2年生の真心。これには言葉を失った。まさにこれが絵として絶景だった。何という暖かな光景だろう。このことを受容し、はっきりと感動の事実を伝えることが親の役目。
親冥利、おめでとう36代。ありがとう37代。ようこそ38代。
コメント募集
この度娘たちは無事引退となりました。1475席実質満員というこれ以上望みようのない舞台となりました。ここに改めてお礼申し上げます。
足をお運びいただいたみなさまはもちろん、日頃ブログを訪問してくださる方々のコメントをお待ちしています。
演奏会についてのご感想の他、高校オケ関連のコメントをお寄せいただき、長く保存したいと考えています。
是非お気軽に。
<Bach様
39代を一人確保でしょうか。
貴重な情報をありがとうございます。
これから進路を決めようかという中学生の言葉は、何よりも増して説得力がございます。
私自身、32代のスペコンで、まだ中2だった次女を連れて鑑賞したときに、すっかり聞き惚れて、勝手に娘の進路を決めてしまった経験があります。
投稿: アルトのパパ | 2013年5月15日 (水) 21時53分
昨日に引き続いてもう一つ。
演奏会が終わって会場を出た時、後ろに中学生と思われる
女の子が ”ウチ絶対オーケストラ部に入る。”
と友達に話をしていました。
この一言が、この日の演奏が聴衆にどう受け止められたのかを
端的に語っているのではないでしょうか?
未来の部員誕生の瞬間でした。
投稿: Bach | 2013年5月15日 (水) 19時26分
<Bach様
おぉお。ブラームスさんがボロディンさんを連れて聴きに来られることは知っていましたが、バッハ様もお見えでしたか!!
OGオケは確かに凄かったですね。合唱部は演奏前の立ち居振る舞いで既に圧倒されました。ブラボー入れそこなったのが心残りです。
いずれこられは記事にするつもりでしたが、先を越されました。さすがバッハ様はお目が高い。
投稿: アルトのパパ | 2013年5月14日 (火) 20時28分
現役の子達の演奏はすばらしく、特にボロディンに至っては
コメントしようも無いほどの完成度でしたが、ここで敢えて現役の
子達以外に当日びっくりしたことを二つ述べたいと思います。
一つはOGオケの演奏。7回しか練習していないとの事でしたが
一つに纏まって激しさや高貴な雄大さを見事に演奏していました。
二年間精魂を傾けて取り組んだ事は技術にしても仲間との
連携にしてもしっかりと身についてるものだと感じました。
もう一つは幕間の合唱部の演奏。1年と2年だけの出演
でしたが、思わぬ程の出来でした。
今年の活躍が楽しみです。
投稿: Bach | 2013年5月14日 (火) 19時52分
<カレンの母様
はい。お気持ちお察しします。凄い「母の日」でした。
またコメントしにいらしてください。
投稿: アルトのパパ | 2013年5月13日 (月) 22時33分
気の利いたコメントをしたいところだけれど、、、、
人生、とうに折り返したおばさんに、丸一日たっても思い出しては胸が詰まる思いをさせる昨日出来事がどんな出来事だったのか、しばらく反芻しつつ考えないと理解できません。
スペコンのコメント、もうしばらく待ってはくれませんか?
投稿: カレンの母 | 2013年5月13日 (月) 20時54分
言い出しっぺの私自身から。
次女を送る車内。皇帝日和。満員の客席。合唱部の歌声。レプレのホルン。自動操縦モード。ハグタイムのメモリー・・・・・・。
これら全部、涙腺決壊ポイント。
コメント無いとかっこ悪いので自分で一つ確保。
投稿: アルトのパパ | 2013年5月13日 (月) 09時03分