準決勝の出来
次女の高校の音楽系部活合同の定期演奏会があった。「マンドリン」「吹奏楽」「合唱」「オーケストラ」の4部合同だ。オーケストラ部以外の3つの部活では、昨日をもって3年生が引退となる。それにしても、器楽系3部に囲まれた唯一の声楽系・合唱部の演奏は、素晴らしかった。およそ1時間のステージが完全な暗譜演奏。オケに比べてステージ上の動きが少なく、吸い込まれるような緊張感。よくよく見ると部員一人ひとりが少し揺れているのが、神秘的だ。2曲目の「Lauda Sion」がとりわけ気に入った。ダイナミクス「ピアノ」の内側が5段階くらいに分かれている感じ。
さてさてオーケストラ部には一週間後にもう一度引退公演ともいうべきスペシャルコンサートが待っている。だから気分は準決勝。準決勝のプログラムは以下の通り。
- 「カヴァレリア・ルスティカーナ」より前奏曲
- 仮面舞踏会
- 「となりのトトロ」より「風の通り道」
- 八重の桜
- ボロディン;交響曲第2番 全曲
まずはカヴァレリ。熟成を重ねた間奏曲ではなく前奏曲。あの子達のオケの土台を形成する作品。第一ヴァイオリンのメンバー全員の音が溶け合ったせいだろうか、響きに奥行きがある。
もはやロシア物はオハコかと思わせる仮面舞踏会。カヴァレリと同じオケとは思えぬワイルドな音色。引き出しがこっちにもという感じ。
「風の通り道」にあるコンサートミストレスのソロ。いいねぇ。丸くてギスギスしてないほっとする音色。
最後のボロディンはオケフェスからまた上乗せがあった。第一楽章の「Sul G」の連発はホンの名刺代わり。松脂の煙たなびく大熱演なのだが、そこはボロディンの意図通り、疑問が疑問のままに終わる。第一楽章の後で盛大な拍手が来てしまった。続く手に汗握る第2楽章はキビキビとすばしこく飛び跳ねるオケ。それが第3楽章の美しさの前触れでしかないという仕掛け。やっぱりまた拍手をもらってしまった後、実は超しっとり系の第3楽章こそが、全曲のヤマなのだと確信。薄皮一枚を丹念に貼ったり剥がしたりの自在のニュアンス。花丸を特大であげたいクラリネットとホルンの肝っ玉の座りっぷりと、それを掌に包み込んで「はいどうぞ」とばかりにそっと差し出すようなオケの風向き。木管はとにかく見せ場の連続なのだが、度胸試しばかりされるホルンとハープの「ポロン」という和音から、音も無く立ち上がるクラリネットの繊細さは筆舌に尽くし難い。
フィナーレに繋げるセカンドヴァイオリンの5度が、今日はやけに身にしみた。曲が4楽章に差し掛かると、オケ全体に「ココまで来ればもう大丈夫」というオーラが充満する。ちゃんと音に出ている。打楽器とコントラバスのキレは最早伝統なのだろう。ノーブルで誇り高きピッコロは、抜群の安定感でスパイスを効かせてくれる。毎回感心するので、最早まぐれではあるまい。第一楽章で解決されずに残ったままの疑問が、すっきりと片付けられる。指揮者だけでなく、みんながそうしたストーリーを呑み込めている感じ。
次女はといえば顧問の指揮者の左膝元の指定席で、四方八方にアンテナを張り巡らすよう。作品の持つストーリーの段落ごとに仲間とのコミュニケーションを楽しんでいる風情。
いつもより念入りに感想を文字にした。宣伝のためだ。嘘だと思うなら7日後のスペシャルコンサートに足をお運びください。
何とも回りくどい親ばか。
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