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2013年6月30日 (日)

続ドルフ考

8月10日の記事「ドルフ考」の続きだ。というよりこちらを効果的に発信するための前振りが先般の記事だったと申し上げてよい。

ワインのことを調べているうちに某図書館で興味深い資料を見つけた、1979年のドイツワインのブドウ園のリストだ。5千数百のブドウ園の名前がエリアごとに列挙されている。道路地図が扱う地名よりももっと小さな単位、日本で申せば小字程度の地名が丹念に拾われている感じだ。結果として優秀な地名リストになっている。

ワインの銘柄はエリア名、地区名、畑名が順につながれている。最後の畑名は買い手へのアピールの効果も狙ってか奇抜なものも少なくないから、純粋な地名とは区別も必要だが、その一つ上の地区名は、道路地図の索引にも載っている。大体これが1200程度収載されている。いわばそれはブドウ園の存在する地名リストと考えてよい。このリストに「~dorf」という地名は以下の12しか現れない。1%である。

  1. Mosel Saar Ruwerの Ellenz-Porsterdorf
  2. Mosel Saar Ruwerの Bausedorf
  3. Mosel Saar Ruwerの  Mertesdorf
  4. Mosel Saar Ruwerの  Onsdorf
  5. Mosel Saar Ruwerの  Sehndorf
  6. Nahe の Oberndorf
  7. Rheinpfarzの Nussdorf
  8. Badenの Altdorf
  9. Badenの Nimdorf
  10. Badenの Markdorf
  11. Wurttembergの Schorndorf
  12. Frankenの Repperndorf

ドイツ道路地図での出現率は6%強だから、数分の1のオーダーだ。語尾以外の位置にDorfが来る地名もかなりな数あるが、ワイン園のリストではゼロだから実感としては10分の1という感じがする。特にブラームス在世の19世紀における最高の産地ラインガウ地区ではブドウ畑にドルフという地名が現れないということだ。

「ブドウ産地に地名語尾ドルフは現れにくい」という仮説を提案する次第である。記事「石の山」で、植物としてのブドウの特性を述べた。「石ころだらけの斜面」を好むと書いた。これにより主食の小麦やじゃがいもと耕作地が重ならないと指摘した。一方8月10日の記事「ドルフ考」では、ドルフの起源は「畑」であると紹介した。

これら一連の現象が「ブドウ園の存在する場所に地名語尾dorfが現れにくい現象と符合しているように思えてならない。小麦やじゃがいもの栽培に適した土地こそが「dorf」なのではあるまいか。ブドウはドルフを嫌い石の山に追われていったことを地名の偏在が仄めかしてはいないだろうか。

ワインの原料であるブドウの生産は、穀物に対しておよそ5倍の収益があるけれど、投入する労働力は9倍になる。土地生産性は高いけれど、労働生産性は低いといわれている。出来不出来が天候に左右されることはどちらも同じだ。どちらを選ぶか農民に選択の余地があったわけではない。気候や土壌によりブドウが出来ない土地も多い。よい土地があればひとまず穀物かじゃがいもを作っておくのが無難だった。

本日のネタ実に私好みだ。惜しむらくはブラームスに関係がない。

2013年6月29日 (土)

記事3000本

本日のこの記事でブログ「ブラームスの辞書」の記事が3000本に到達した。

2013030418160000 

またまた愛車のメーター。

2013年6月28日 (金)

ラインガウ

水辺語尾「au」を調べていると悩ましいこともある。「bau」「chau」「dau」「hau」「sau」などさまざまな子音を伴う「au」が等しく「水辺語尾」でよいのかという問題だ。「このうち「sau」は意味がよろしくないから「所有のs+au」という解釈でストレスを減じることが出来るが、その他は相当悩ましい。

その代表格が「gau」だ。ワインの大産地「Rheingau(ラインガウ)」を思い出す。地名語尾「gau」は「水辺の森林」「水の豊かな森林」を表すらしい。水辺語尾ともいえるが、森林であることが必須だ。ラインガウを写真で見ると、畑の上部の山の方は、こんもりとした森に見える。実はこれがブドウ生育条件の目安になっているとも聞く。こんもりとした森の下は良いブドウ畑の印だという訳だ。地名語尾「gau」の定義に符合する。

ラインガウはカール大帝の王宮があったインゲルハイムの対岸という絶妙の位置にある。雪解けのタイミングからブドウ栽培の適性を見抜いたという伝説には用心を怠らないにしても、ラインガウの古文献初出は西暦772年であり、これがカール大帝即位の4年後だという不気味な符合には驚かされる。

2013年6月27日 (木)

Familienamen

滅多に無い掘り出し物を発見。都内某書店の洋書フェアでのことだ。あまりの掘り出しっぷりに思わず手が出た書物の名が本日のタイトル「Familiennamen」だ。英語でいう「ファミリーネーム」だからつまり「苗字」のこと。副題が「Herkunft und Bedeutung von 20000nachnamen」となっている。「苗字20000種の起源と意味」くらいのニュアンスでOKだ。

ドイツ語の苗字20000が、アルファベット順に羅列列挙されていて、その起こりと意味が書かれているということだ。ほぼA5判で、960ページのハードカバー。出版社は安心のDUDEN。もちろん全部ドイツ語なのだが、電子辞書片手に眺めているだけで楽しい。苗字の出所がおおよそ下記の通りに分類されている。

  1. あだ名 赤髪だから「ロート」さんというパターン。
  2. 居所 住んでいる地名が苗字になったケース。
  3. 先祖の出身地 
  4. 職業 シュミットさんなど。
  5. ファーストネーム起源 元々ファーストネームだった。

やけに細かい。上記の2と3には、起源となった地名が所在する州が書かれているので、地名との関連も濃い。

主要な苗字の分布の様子が地図上に示されていたり、おのおのの苗字の代表的な著名人が写真や肖像入りで紹介されている。政治家、学者、小説家、音楽家、スポーツ選手、俳優、ジャーナリストなど。当然真っ先にブラームスを引いたらちゃんと載っていた。片っ端から音楽家を探す。次いでサッカー選手を探す。

気になるお値段。本来4250円のところ、7割引で1330円だった。元々25ユーロだから2千数百円だが、書店店頭では4250円だったのだろう。それが1330円となると25ユーロから見ても半額に近い。しばらく退屈しない。

2013年6月26日 (水)

首都アーヘン

アーヘンは「Aachen」と綴る。ボンのほぼ真西ベルギーとの国境沿いにある。Aachenは、水辺語尾「au」や「川」を意味する「Ache」に関係があるとされている。

カロリング朝カール大帝の首都と位置付けられている。もちろん現代における首都とは意味が違う。当時は皇帝と言えども一箇所にとどまっていなかった。在任中征戦に明け暮れたから、首都の機能はカールの移動と共に移転した。ライン南岸のインゲルハイムもその一つだ。カール大帝がもっとも長く滞在したのがアーヘンだ。

アーヘンがあるのはライン川とマース川に挟まれたあたり。ベルギーやオランダの一部を含むこの地域が、カールを育んだカロリング家の出身地だ。カールがアーヘンに長く滞在し、半ば首都の様相を呈したのは、そこが王朝にとっての父祖の地だからと解すると納得が行く。

さらに決定的なことがある。カールの孫の代で3人の王子が国を分割した時、長男のロタールが押えた中央フランクの領域にこのアーヘンが属しているということだ。大帝カールゆかりの地である、カロリング朝の出自の地を長男が領有するのは自然なことだと思われる。

次男三男による密約ではなく、単に長男が一番おいしい選択をした考える根拠である。

2013年6月25日 (火)

ラインヘッセン三角地帯

まずはマインツを見つけよう。スイスに端を発してほぼ北流を続けてきたライン川が、急に西に向きを変えるところ、その内懐にマインツがある。覚えておこう。マインツで左折し約30kmの間西向きに流れたライン川が元通り北に向きを変えるきっかけは,左から合流するナーエ川だ。この合流点にビンゲンがある。

最初のマインツに戻る。ここからほぼ南におよそ60kmのライン川左岸にヴォルムスという町がある。これら3つの町を直線で結ぶとちょうど三角定規のような形になる。マインツが90度、ビンゲンが60度、ヴォルムスが30度だ。実は実はこの三角形の内側がワイン業界で「ラインヘッセン」と呼ばれている。名産地ラインガウの対岸という位置でもある。

不思議なことがある。家々・集落を意味する地名語尾「ハウゼン」(hausen)は、この三角地帯を空白としてドーナツ型に分布する。そしてその空白域を埋めるように地名語尾「heim」が鬱蒼と分布する。heimの意味も「家」あるいは「集落」だ。

ワインについて調べるためにラインガウ付近の地図を見つめていて気がついた現象である。ブドウの栽培やワインの醸造と何か関係がある現象なのかもしれない。そういえば、ほぼドイツ全土に分布する地名語尾「dorf」(村)、「berg」(山)もこの三角地帯には現れないし、さらに南ドイツに密集する地名語尾「bach」(小川)も何故かこの地域を避けている。

なにやら歴史を背負っていそうだ。

2013年6月24日 (月)

短調の泉

ライン川の支流にナーエ川がある。南西から流れてきてBingen付近でライン川に合流する。この流域もワインの産地になっている。その合流点ビンゲンの南約10kmの地点にハルゲスハイムという街がある。ワインの銘柄について調べているうちにお宝情報にめぐり合った。

ハルゲスハイム産のワインに「Mollenbrunnen」という銘柄があった。ワインのラベルには「Nahe Hargesheimer Mollenbrunnen」と書かれているハズだ。意味は「短調の泉」か。ドイツでは一定品質以上のワインは単一の畑からのブドウだけで作られ、その地区名畑名がそのまま銘柄になる。ハルゲスハイム町内に「Mollenbrunnen」というブドウ畑があって、そこから採れたブドウで作ったワインということになる。「Mollen」には「楕円の桶」という意味もあるにはあるのだが、「短調の泉」の方がいい。

純粋にその畑の地名であることもあるが、銘柄としてのネーミングが勝っている場合もある。それにしても気の利いたネーミングだ。現に私が既にそのワインを飲みたいと感じている。

2013年6月23日 (日)

シューベルト岩

2010年10月15日の記事「ヨハニスベルガー」でブラームスのファーストネーム・ヨハネスに近くて惜しいと書いた。ブラームスそのものズバリの銘柄がありはせぬか調べたが見つけることが出来なかった。代わりにキュートな外道がヒットした。

「Schubertslay」という銘柄だ。ドイツのワイン大産地モーゼルの中でもとりわけ有名なピースポート産だ。銘柄ネイミングのルール通りなら「Schubertlay」というブドウ園があって、そこから採れたブドウだけを使って作ったワインが「Mosel Piesporter Schubertslay」などと書かれたラベルとともに売られているハズだ。「lay」は地名語尾で「岩」だから、「シューベルトの岩」とでも解されよう。

作曲家の名前を取り入れた銘柄は意外と少なくて他にはラインガウに「Hendelberg」が見られるくらいである。だからこそ飲んでみたい指数は嫌でも高まる。万が一「Brahmsseufzer」(ブラームスのため息)などという銘柄でも発見したら、買出しに行ってしまいそうだなどと浮かれている場合ではなかった。

意外なところからその由来を発見した。ライン沿岸に進駐してきたナポレオンがシュロス・ヨハニスベルクに駐屯したことは既に述べた。このとき修道士たちを追放したのだが、彼らが所有していたブドウ園や醸造所は競売にかけられた。運よく一流の畑を落札した一族は、その後ひと財産築いた者も多い。

このときモーゼルでよい畑を落札した一家の一つが、シューベルト家だった。私が心躍らせたワイン「シューベルト岩」(Scuhbertlay)は、この一家の名前に因んだネーミングという可能性が高い。

少々がっかり。

2013年6月22日 (土)

土壌の呼び名

記事「テロワール」でブドウが好む土壌を列挙した。これをドイツ語で何というのか調べていて興味深い情報を入手した。

ドイツワインのラベル表示は村名と畑名を併記することで成り立っている。この畑名を調べていると「石」に関係する名前が多いのだ。

  1. Drahenstein 竜の石
  2. Hunnenstein フン族の石
  3. Kieselberg 小石の山
  4. Mandelstein アーモンド石
  5. Marmorberg 大理石山
  6. Sand 砂
  7. Sandberg 砂山
  8. Sandgrub 砂坑
  9. Schieflay 粘板岩
  10. Schwarzstein 黒石
  11. Steinacker 石の畑
  12. Steinchen 小石
  13. Steinkaul 石坑
  14. Steinmorgen 石の朝
  15. Steinweingert 石のブドウ園
  16. Steinweg 石の道
  17. Teufelstein 化け物石
  18. Weiserd 白い土
  19. Weissstein 白い石

「岩」を表す「lay」だってぞろぞろ見つかる。これらが実在する畑の名前なのだ。受け狙いのキャッチコピー的ノリはあったに決まっているが、これらが見当違いとも思えない。実在の畑の様子の巧妙な描写になっているような気がする。シュタインベルク「石の山」が例外だった訳ではなかった。

2013年6月21日 (金)

ブラームスの湯10選

ブラームスが赴いた温泉のランキングを試みる。

  1. バート・イシュル 晩年のブラームスが通い詰めた。欧州のセレブが集まるところ。
  2. バーデン・バーデン クララの別荘の近くに家を借りて滞在。
  3. カルルスバート 晩年のブラームスが療養に訪れた。現在はチェコ領で、カルロヴィバリという。
  4. ウィースバーデン 第3交響曲作曲の地。
  5. グムンデン イシュルに程近い温泉地。
  6. バート・ホネフ ボンの南、ジーベンゲビルゲの中。クララ没後の寂寥の中で滞在。
  7. バート・ガシュタイン 1878年夏クララ一家の避暑地。ブラームスの出没を確認。
  8. バート・クロイツナーハ 1862年夏クララ一家の避暑地。
  9. バート・エムス コブレンツの東。普仏戦争の引き金となった街だからあるいは。
  10. バート・キッシンゲン 大避暑地。ブラームスが訪れた可能性は無いとはいえない。ブラームスはマイニンゲン公と懇意な間柄だった。しばしばマイニンゲンを訪れた。ウィーンからマイニンゲンに行くには、リンツを通ってパッサウでドイツに入り、ニュルンベルクまでドナウ川に並行して走る。ヴュルツブルクで乗り換えてシュヴァインフルトを経由してマイニンゲンに抜けるのが一般的。その途中にバート・キッシンゲンがある。だからきっと立ち寄ったに違いないというのがその根拠。

我ながらおバカな企画。

2013年6月20日 (木)

火成岩マーカー

2010年11月5日の記事「ゴールのマーク」でドイツワインを育む土壌は「デヴォン紀スレート系」と「三畳紀石灰系」であると書いた。大局的にはそれで間違いないが、細かく見ると氷河や造山運動など新生代に起因する土壌も関わっている。とりわけ火成岩はワインの味わいに微妙な陰影を与えるスパイス的な位置付けとされている。

ブラームスの伝記にしばしば「bad」がつく地名が現われる。「Baden-Baden」や「Karlsbad」が引き合いに出されて、温泉にゆかりの地名であると補足される。「bad」は温泉マーカーだというわけだ。地名研究としてはそれでOKだが、もう一つ興味深い側面があるという。

一部のワイン関連書物には「bad」関連地名が「火成岩土壌の目印」だと仄めかされている。「温泉マーカー」であると同時に「火成岩マーカー」でもあるということだ。新生代第3起に起きたアルプス造山運動があった時代に火山活動が繰り広げられた場所に「bad関連地名」が分布しているという主張だ。

ドイツの地質図と「bad関連地名分布図」を比較してみたい。もし本当ならかなり私好みだ。

2013年6月19日 (水)

分農場

ブドウ園系の地名語尾ランキングで大きく順位を上げた地名語尾に「weiler」がある。2.5倍に濃縮された。「heim」に次ぐ大躍進である。独和辞典を引くと「分農場」と書かれているが、さすがにこれには史的説明が必要だ。

土地の相続制度に関する用語だ。フランク人の伝統は均分相続だ。男の子全員に等しく土地が相続される。3兄弟なら親の土地がおよそ3等分されるということだ。相続が起きる度に土地が分筆されてゆくから、1戸あたりの栽培面積が小さくなってしまうばかりか、所有関係が複雑に入り組んでしまうこととなる。19世紀当時のブドウ栽培の大問題だった。そうして分筆されてゆく土地こそが「weiler」と呼ばれたと感じている。

一方ザクセンやバイエルンでは、長男だけに相続される。土地の細分化が避けられる代わりに次男坊以下は別途独自の道を歩まねばならない。他家に養子に出る他、修道院や傭兵に志願するというのも受け皿になったと思われる。おそらくこうして相続される土地こそが地名語尾「leben」に反映しているとにらんでいる。

地名語尾「weiler」はライン川以西にのみ分布し、ザンクトガレンの西南25km「Wattwil」という街がある。周囲は地名語尾「wil」の宝庫であるようにスイスでは「wil」に転訛する。つまりローマの影響を受けた地域に特有の地名語尾だ。ローマあるいはフランスの法制を背負った地名語尾と解しても矛盾は無い。必ずしもブドウだけが栽培されていたとは限らぬが、相続の対象とされる以上耕作適地であったと考えられる上に、ワインの特産地でもあることから、ブドウ園の地名として高濃度を示しても不思議はない。

希望の街「Wattwil」

2013年6月18日 (火)

知恵の言葉

ユトランド半島の付け根Heideの少々北に「Witzwort」という地名がある。「Witz」が「知恵」で、「Wort」が「言葉」で合わせて「知恵の言葉」だ。「Witz」は「機知」という意味もあり、こちらは「ウイット」として日本語にも定着している。文字通りの意味なのだと思う。

ビートルズを思い出す。解散直前の名作「Let it be」だ。そのテキストのサビの部分で「Whisper words of wisdom」と歌われる。「知恵の言葉をささやけ」と解される。テキストの中では、この知恵の言葉こそが歌のタイトル「Let it be」を指している。

「Let it be」中の「words of wisdom」が「Witzwort」と呼応しているように思えてならない。「wort」が地名の語尾に来るケースは多くないから目立つ。

今日はポールの誕生日。

2013年6月17日 (月)

ゲーゲン協奏曲

一般に「ヴァイオリン協奏曲」といわれているが、正式には「ヴァイオリンと管弦楽のための協奏曲」だ。ドイツ語では「Konzert fur Violine」(赤文字はウムラウト)だ。つまり「fur」は「のための」と訳されている。英語で申すなら「for」に相当する。

ブラームスのヴァイオリン協奏曲がヨアヒム独奏により世に出たとき、実は実はその評判は厳しいものだった。ヨアヒムが各地で演奏旅行をする際、その出演契約書には「ブラームスのコンチェルトを演奏しない」という特約が付与されたこともあるという。

当時ウィーンにおけるヴァイオリン演奏の泰斗だったヘルメスベルガーも反対派の一員で、ブラームスのヴァイオリン協奏曲を「Konzert gegen Violine」と称した。「fur」を「gegen」に代えた言い回しだ。「この作品はヴァイオリンのために書かれていませんよ」「ヴァイオリンに拮抗するために書かれていますよ」というニュアンスを一言で言い表している。「gegen」は英語で申すなら「against」だ。ゴルフの世界なら逆風を意味する。もちろん誉め言葉であるハズがない。

サッカーの世界で今「Gegen」は「トレンド」だ。チャンピオンズリーグ準決勝で、ドイツのクラブが、スペインの両雄を撃破したキーワードが「ゲーゲンプレッシング」という。「Gegenpressing」と綴る。冒頭に本日話題の「ゲーゲン」が来る。味方が相手にボールを奪われた瞬間に、すぐさまボールを奪い返す戦術のことだ。味方がボールを奪われ、相手が攻撃に転ずる瞬間こそが、相手守備体制が最も弱い瞬間だと認識している。これがドイツ勢の台頭を支えた思想だという。

昨日FIFAコンフェデレーションズカップが開幕した。

2013年6月16日 (日)

hufe

カール大帝はワイン農家を保護した。優秀な者には土地を与えた。もちろん無償ではない。納税と賦役もセットだった。1人20ヘクタール程度のこの土地を「Hufe」と言った。辞書を引くと単に「払い下げ農地」と記されていたが、シンプル過ぎて意味が伝わらない。

さらに時代が下って中世。農家一世帯が食うに困らぬだけの収穫を得るに必要十分な広さという意味に転化する。およそ8ヘクタール。こうした土地を所有している農家がbauerということになる。

ザクセン州に「Waldhufen」という地名があった。「hufe」の複数形が語尾に来ている。ドレスデンの東北東約20km、東にもう15kmほどでポーランドだ。カール大帝のワイン政策の名残りと思しき地名がザクセンにあるというのも面白い。ザクセン州は旧東ドイツ側では唯一のワイン産地だった。そしてザクセンは、カール大帝が即位後に獲得した地域でもある。

2013年6月15日 (土)

インタビューの日取り

昨日言及した「音楽の創造と霊感」という本、ブラームスへのインタビューが活字化されたものだが、残念なことにインタビューの正確な日付けが書かれていない。1896年晩秋だということは明記されている。場所はウィーンのブラームス宅だ。

ブラームス関連の最終第6章の末尾に、インタビューの4ヵ月後にブラームスが没したと書かれていることをヒントに推理する。

音楽之友社刊行「ブラームス回想録集第2巻」195ページに友人のホイベルガーの証言がある。それによると1896年12月4日の夜の出来事として「ホイベルガーはブラームス、ヨアヒムとその他で夕食に出かけた」と記述している。

先のインタビューは、その場にヨアヒムが同席したことが明記されているし、ブラームス没の4ヶ月前という記述からして、12月4日というのは魅力的だ。名前が明かされていない「友人」の中に著者アーベルが含まれていた可能性もある。この時期のブラームスは、カルルスバートでの鉱泉治療から戻ったものの、傍目にも体調不良が明らかになっていた時期だ。インタビューの内容は、とても精力的で雄弁で、少なくとも病人へのインタビューという雰囲気は感じられない。

2013年6月14日 (金)

音楽の創造と霊感

書物の名前。随分前に入手したが、味わってからにしようと思い、記事にするのを思いとどまっていた。

出版館ブック・クラブ刊行「大作曲家が語る音楽の創造と霊感」著者はアーサー・M・アーベル、吉田幸弘訳。2003年に「我、汝に為すべきことを教えん」という題名で刊行された書物の復刻版だ。

ウィーン在住の音楽ジャーナリストだった著者が、ブラームス、Rシュトラウス、プッチーニ、フンパーディンク、ブルッフ、グリークという6名の大作曲家に試みたインタビューの記録だ。話の核心が「作曲中のインスピレーションはどこから来るか」という点だ。

作曲当時あるいは後世の愛好家を魅了して止まない彼らの作品。作曲者の脳裏にどう去来するのかが作曲者の口から語られる。全300ページのうち120ページがブラームスのために割かれている。およそ3時間のインタビューの記録が6つの章に分かれて収載されている。インタビューに同席したヨアヒムによる補足が1章加えられる。

私の感想を3行で申せば下記の通りとなる。

  1. 興味深い ヨアヒムが驚嘆するほどの貴重な情報。クララやヨアヒムがどんなに望んでもけして語ることがなかったブラームスの本音だとヨアヒムが保証している。
  2. もどかしい インスピレーションの去来が、宗教的経験を通じて語られる。聖書に加えシェイクスピアなど文学界の巨匠の言葉が頻繁に引用されるので、こちらにその知識が無いと、味わいが半減する。
  3. 後で読もう こちらの予備知識がたまった後に再読することで、楽しみが倍増することは間違いない。

インタビューに同席したヨアヒムの言葉もかなり貴重だ。

2013年6月13日 (木)

大例外

昨日の記事で地名語尾「heim」がライン川南岸に集中すると書いた。ところが今日はいきなりその例外の話だから、いささか決まりが悪い。ワインの大産地にもなっているライン川の大クランクの北岸にブラームスが第3交響曲を書いたヴィースバーデンがある。そこから西の一帯がラインガウと呼ばれる銘醸ワインの産地だ。その中枢部にあるのがヨハニスベルクであることはすでに言及したが、さらにそのまた西南西およそ4kmの位置にあるのがリューデスハイムRudesheim(uはウムラウト)である。紛れも無くライン川の北岸なのに「heim」が付くといういきなりの例外。あろうことかこの街はブラームスと関係があるから始末が悪い。

1882年1月クレーフェルトの演奏会で知り合ったルドルフとヴィリーのベッケラート夫妻が住んでいた。ワインの醸造販売に精を出す夫と、絵心のある妻とたちまち意気投合し、翌年のヴィースバーデン滞在の際の下宿を見つけたのも夫妻のコネだと言われている。妻ヴィリーは現代に伝えられる有名なブラームスのスケッチをいくつか残している。

このあたりでワイン醸造販売業を営む夫妻と懇意になれば、超高級ラインワインの飲み放題が見えている。リューデスハイムはワイン愛好家垂涎の吟醸地だ。

2013年6月12日 (水)

地名語尾「heim」

地名語尾への極端な傾倒は、ワイン関連記事を書くための調べ物で地図を眺めてたことがキッカケだった。ドイツワインの大産地ラインガウ近辺の地図だ。ライン川が唯一東から西に流れてクランクを形成するあたり、ラインの流れを境にして南北で地名語尾の出現が劇的に違うことに気付いた。ライン川の南には地名語尾「heim」が密集する一方で、北側にはほとんど見られないという現象だ。地名語尾「hausen」がその逆の傾向を示していることにも程なく気付いた。ライン川のその一帯を離れるとどちらも均等な分布に復していることも伺えた。

これをキッカケにドイツ道路地図の索引にある地名をエクセルに収録するだけでは満足できずに、地図上へのプロットを決心したというわけだ。ラインガウ一帯にとどまらずドイツ全土における分布を調べることが手掛かりになると直感した。

結果はおどろくべきものだった。私がワインネタに引っ張られて眺めていたラインガウ一帯こそが、全ドイツで地名語尾「heim」がもっとも色濃く密集する地域だった。これがドイツ方言学でいう「ラインフランケン方言」の分布域と一致する上に、ワイン産地ラインヘッセンとも一致することが判った。ラインフランケン方言がカール大帝の宮廷で用いられた言葉であることを知り目から鱗が落ちた。この地域の中心都市インゲルハイムにカール大帝の王宮があった。

さらに地名語尾「heim」の分布がザーレ川を東の限界にしていることも象徴的だった。カール大帝率いるカロリング王朝の最大勢力圏と一致する。地名語尾「heim」が何らかの形でカール大帝あるいはカロリング王朝に関係があるのではないかと思っている。

2013年6月11日 (火)

ザンクトゴア

「Sankt Goar」と綴る地名。「Sankt」は「St」と略記されることもある。「聖」という意味がある。聖人ゴアに由来する地名だ。場所はライン川の名高い名勝ローレライの下流1kmほどの位置にある。ローレライは東岸だが、ザンクトゴアは西岸。

大変興味深いのは、ザンクトゴアの対岸、ライン川を挟んだ位置に「ザンクトゴアハウゼン」という街があることだ。ローレライと同じ東岸の小さな街。昨年のドイツ旅行3日目。午前中にボンを観光して午後からローテンブルクに向かった際、我々はこのザンクトゴアハウゼンで休憩した。バスから降りてラインの岸辺を歩いた。ネコ城も程近い。

1857年夏、ロベルト・シューマン没から1年後にブラームスはクララとその娘たちを誘ってライン旅行を企てた。翌年1858年の夏にそれを懐かしく思い出した手紙が、ブラームスからクララに贈られている。それによると一行がザンクトゴアスハウゼンを訪れたことが判る。私も長男と飽きずにラインの流れに見入った。一行が歩いたかもしれない市庁舎前で写真を撮った。

ライン川を隔てて「ザンクトゴア」と「ザンクトゴアスハウゼン」が向かい合っている寄寓にはきっとわけがあるに違いない。地名語尾「ハウゼン」の解釈に役立つこと確実だ。

2013年6月10日 (月)

英国とワイン

ワイン関係の少々詳しい書物を読んでも「英国ワイン」が特段に話題になることは無いと断言してよい。ビールやウイスキーや紅茶とは違う。ワインの生産という面ではほぼ話題にならぬ英国だが、ワインの消費地としての位置付けは低くない。英国の人々が好んだのはフランス・ボルドー産とドイツ・ライン産だ。どちらも大西洋に注ぐ大河のほとりという共通点がある。

ヴィクトリア女王もワインが好きだった。ラインガウは「ホッホハイム」(Hochheim)のリースリンクを好んだ。どれほど好きだったかということをよく顕した逸話がある。彼女は自らの好むワインの生産地に行幸したのだ。女王自ら足を運ぶという栄誉に浴した産地は、ただ喜ぶだけではなかった。まさにその畑が「Konigin Victriaberg」(ヴィクトリア女王山)と名乗る許可を取り付けた。この畑で産するリースリンクを原料とした極甘口ワインに「Konigin Victriaberg」(申すまでも無く最初のoはウムラウト)とラベリングして売り出した。大したネーミングライツだ。

この話1845年だ。12歳のブラームスがハンブルクでヴィクトリア女王行幸のニュースを聞いたかどうか定かではない。

2013年6月 9日 (日)

末子相続

相続に関して昨日の話題の続き。

男子全員に均等相続する慣習は、ライン川とその支流沿岸に分布するのに対し、その他の地域は特定の一人に相続されるいわゆる「単独相続」だ。ところがこれも大きく2つに分けられる。長子相続と末子相続だ。ライン沿岸に分布する均等相続が、フランク族またはローマに起原を求められるのに対し、単独相続地区は「長子」と「末子」に分かれる。大雑把に申してバイエルンは末子で、ザクセンが長子だ。

これが地名に反映していれば面白いのだが。

2013年6月 8日 (土)

均分相続

男子に等しく権利があるフランク人伝統の相続制度。フランクといえばカール大帝だ。彼にも3人の王子があった。遺言は3人で均分相続せよと言うものだったが、カール大帝崩御の時、王子は1人しか生きていなかった。だからもめずに済んだともいえる。生き残りのルートヴィヒ敬虔王には王子が4人いてうち3人が生き残ったから大変だった。国王の子供たちが均分相続するのだから国家が分割することになる。いわゆる「フランク王国の分裂」だ。

  1. 長男 ロタール オランダからフランス北東部、ライン沿岸を経て北部イタリアに至る「中央フランク」を相続した。
  2. 次男 シャルル 中央フランク以西の今のフランスを相続し「西フランク」となる。
  3. 三男 ルートヴィヒ ライン以東を相続し「東フランク」となる。

最初に没した長男の領土を弟たちが分け合うという史実が強烈なせいか、中央フランクの影が薄い。長男が中央を相続したのは弟たちの談合の結果だということになっている。中央フランクは民族も地勢もさまざまで統一国家の経営は一番難しいに決まっている。弟たちの狙い通りだという考えでよいのだろうか。

見方を変える。ワイン好きの目で眺めてみる。この3つの国のうちどれか一つをくれてやると言われた場合、ワイン好きならどこを獲るだろう。東フランクは真っ先に脱落だ。現代のワイン王国フランスも実はまだブレーク前だったことを考えると、一番おいしいのが「中央フランク」という結論になる。おまけにここにはライン川の水運まで付いて来た上に、当時まだフランス以上の産地だったイタリアまで手に入るではないか。ワインのおいしい順なら、中央、西、東の順だ。これがまたキッチリ王子たちのが相続した順になっている。年の順においしい領域を獲っただけのような気もしてきた。

弟たちもそれは知っていた。だからライン沿岸とりわけアルザス・ロレーヌ地方はドイツとフランスの領土争いの焦点であり続けた。そうロレーヌ、ドイツ名ロートリンゲンは、フランク三兄弟の長兄ロタールにちなむ地名だ。

2013年6月 7日 (金)

ワイン地名語尾ランキング

某図書館で1979年のブドウ園リストを見つけた。集落名に加え各々の畑の名前が列挙されている。畑の名前はFALK社製ドライブマップの索引には収載されていない小字程度の地名だが、その上の集落名は索引への収載は五分五分ながら、地図上ではほとんど記載されている。このほどその集落名を全てエクセルに取り込んだ。総数およそ1200の地名群だ。先の記事「地名語尾ランキング」と同じ要領でランク付けした。

  1. heim 313箇所。26%。△ドライブマップ(以下DM)では第3位で4.43%だったから5倍以上に濃縮された。いわゆるラインヘッセンに集中する。
  2. bach 144箇所。12%。△DMでは第2位で5%だからこちらも2倍以上の濃縮振りだ。
  3. ingen 112箇所。9.3%。△DMでは4位だった。南部のブドウ園に多い。
  4. berg 47箇所。3.9%。率順位とも不変。
  5. weiler 38箇所。3.2%。△DMでは1.3%で15位だから大躍進。
  6. hausen 33箇所。2.8%。ほぼ不変。
  7. stadt 26箇所。△DMで1.0%で18位からの急上昇。
  8. au 25箇所。▼2.1%。DMで3.11%6位からの後退。
  9. burg 25箇所。2.1%。ほぼ不変。
  10. dorf 23箇所。▼DMでは6,38%の第1位だから大不振だ。

驚くべきは「heim」と「dorf」だ。地名語尾「dorf」は、ブドウ園に限れば大きく順位を落とす一方で、「heim」はおよそ5倍に濃縮される。ドイツのブドウ園はほぼ「ベンラート線」以南にあるから、ベンラート線以南に分布する「bach」も、地味に順位を上げる結果となった。

2013年6月 6日 (木)

サンテミリオン

1885年5月12日道中ワインの北限談義をしながらドレスデンに入った鴎外は、ドレスデン市街のシューマン酒房に立ち寄る。そこで「サンテミリオン酒一瓶を傾く」と書かれている。「サンテミリオン」とはいったいなんぞ。

注を読んで納得。「St.Emilion」だった。エミリオンの「E」のおかげで「t」が発音されて「サンテ」になったということだ。なんとこれがイタリアワインだった。パルマ付近で産出されるエミリアワインに間違いない。北緯51度上にある欧州最北の産地を通過してきたその夜に、北緯45度付近で産出されるエミリアワインを飲んでいたことになる。

鴎外がイタリアワインに言及するのはもう一箇所1886年5月29日ミュンヘンだ。この日鴎外はキアンティ(Chianti)を賞味した。トスカーナ産の赤ワインである。

2013年6月 5日 (水)

北限の証言

気がつけばアラビアンナイト計画のエンディングまで1ヶ月を切っている。

例によってやや唐突に鴎外の「独逸日記」1885年5月12日の記述。ライプチヒからドレスデンに向かう車中のエピソードが記載される。間もなくドレスデンというときになって、列車がレースニッツLossnitzに差し掛かった頃、鴎外は車窓にブドウ畑を見つける。

ここで同行の友人が薀蓄を披露する。ブドウは年間平均気温摂氏9度以上でないと育たない云々。ドレスデンの年間平均気温9.1度だからギリギリこれを満たしている。「欧州大陸中葡萄栽培の北界にあたる」と結ばれる。

おお、現在でもこのあたり一帯はドイツワイン産地としては最も東にあたる。厳密に申せばライプチヒ近郊のザーレ・ウンシュトルート地区がワイン生産の北限だが、レースニッツも大局的には北限と申してよい。130年前からワイン生産の北限が変っていないことが判る。しかも文豪鴎外の貴重な証言。

「独逸日記」1885年5月12日の記事をキッカケにブログ「ブラームスの辞書」はアラビアンナイト計画のエンディングに向けてファイナルアプローチに入る。シートベルト着用のサインが出る頃だ。5月12日は次女たちの晴れ舞台スペシャルコンサートの日だった。その日から128年前の鴎外の記述を梃子に、「地名語尾特集」最後の隠しテーマ「ワイン」に突入する。

2013年6月 4日 (火)

Rheinfall

強いて訳すと「ライン滝」か。「滝」は本来「Wasserfall」だけれどここでは「fall」だけで「滝」の意味。ライン川がボーデン湖から流れ出てすぐ、シャウハウゼンの街の南郊にある。高さ23mで、幅150mの横長の滝。横長とはいえ船の通行は不可能だ。古来水運の大動脈であり続けたライン川だが、北海からの船はバーゼル止りになっているのは、ひとえにこの滝のせいだ。このあたり、スイス領がライン北岸にせり出していて、この滝もスイス領になっている。

2013年6月 3日 (月)

トロッポ考

サッカーの結果を報じる欧州の地元紙の見出しは、センスがあって面白い。「言い得て妙」な見出しに頻繁に出会う。本日はそうした話の一つ。

バイエルンミュンヘンの優勝で幕を閉じた12-13欧州チャンピオンズリーグ。ベスト32でバルセロナとACミランが準々決勝進出をかけて対戦した。ファーストレグ、ミランは劣勢の予想を裏切ってホームで2-0の勝利。ひょっとすると大金星かもと、胸をときめかせての臨んだセカンドレグだがカンプノウで0-4と完敗し、合計スコアで逆転されて敗退した。殊勲者はメッシ。神業的な先制ゴールを含む大活躍だった。

翌日イタリアの新聞コリエレデッロスポルトの見出しは「Troppo Messi」となっていた。愛読するサッカー雑誌では「あまりにもメッシ」と和訳されていた。「Troppo」を「あまりにも」と訳している。いやはや名訳である。

ブラームス作品の楽譜上に現れるときは大抵「non troppo」としての登場だ。語幹に据えられる単語の意味が極端に受け取られないような効果がある。「troppo」単独なら「余剰」「過剰」となるが、これが「non」で打ち消されているという構造だ。

関心していたら準々決勝でもまた同じ用法が見られた。バイエルン対ユヴェントスの対戦。こちらは大方の予想通り2戦とも2-0でバイエルンの完勝。その2戦目の翌朝の新聞ガゼッタデロスポルトの見出しが「Troppo Bayern」となっていた。「あまりにもバイエルン」ではなくて「バイエルンは強過ぎた」という訳だった。

両方とも自国クラブの敗退を報ずるイタリア紙だ。イタリア語とりわけ新聞一面の見出しにおいてはポピュラーな表現なのだと思う。

バイエルン・ミュンヘン、3冠。

2013年6月 2日 (日)

奇跡の小宇宙

それだけで完結した一つの別世界。次女たちが過ごした高校オケは確かに別世界だ。

  1. 生徒 主役はもちろん生徒。事実上2年間の部活現役の間、それはそれは濃い毎日。厳密には1年生と2年生に分かれる。
  2. 先輩 一つ上の先輩との絆は濃くて太い。後輩をかわいがる先輩と、それを慕う後輩。
  3. 後輩 一つ下の後輩との絆もまた然り。
  4. OG 年々堆積してゆくOGの層。音楽的価値観を共有する良き仲間。
  5. 先生 顧問の先生との音楽的つながり。日常のつながり。実はこここそが扇の要。
  6. トレーナー 大学オケでは有り得ない大勢のプロフェッショナルな音楽家との交流。
  7. 親 後援会と通じた関わり。娘らのオケに積極的に関与する親たち。

上記7者が渾然一体となって織り成すハーモニー。厳密にはもう一グループある。OGでも親族でもないのに演奏会に足を運んでくれる人々。実はこの階層が貴重。乙女たちの演奏を聴いて、「また次も聴きたい」と思ってくれる人々。そしてそして音楽系の部活に所属する近隣の小中学生。この子らのうちの何%かはやがて部員になる。

大小さまざまの奇跡がたびたび起きる別世界がもう7年も続いている。お金や時間を単にかけるだけではけして実現しない夢の世界。

小さくない奇跡が昨日、一つ起きた。

2013年6月 1日 (土)

ドルフ違い

地名語尾「dorf」は、カタカナに転写されると「ドルフ」になるのが一般的だ。しかしドイツ語圏の地名で「~ドルフ」とあれば必ず「~dorf」とは限らないという実例があった。

ヨハン・セバスチャン・バッハの伝記に登場する地名だ。両親を相次いでなくした10歳のバッハは、長兄ヨハン・クリストフに引き取られた。ヨハン・クリストフが住んでいたのは、「オールドルフ」という街。ほぼ100%「オールドルフ」と書かれているが、スペルを調べると「Ohrdruf」になっている。

街を流れている川が「Ohra川」だから、語頭の「Ohr」はそれで説明がつく一方語尾の「druf」は難解だ。愛用のドイツ道路地図の索引12000項目でも、地名語尾「druf」はここだけである。

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