ビール純粋令Ⅲ
さて「ビール純粋令」公布の目的が、不正な混ぜ物を禁ずることと、小麦の使用抑制にあったと書いた。実はこれは表向きの理由だ。
小麦はビール原料として大麦よりもはるかに長い歴史を持つ。1516年にビール純粋令が成立した時点で、バイエルン領内のあちこちで小麦ビールは作られていた。しからばこれらが直ちに法令違反になったかと申すとそうではない。よくよく調べるとビール純粋令は下面発酵ビールにのみ有効だったのだ。小麦を原料とするヴァイツェンは上面発酵だから純粋令の枠外だ。
実はそれでいて、小麦ビールの醸造権を宮廷が独占した。上面発酵の小麦ビール醸造を独占する一方で、下面発酵ビールには厳しい品質規格を設けたということだ。小麦は食用に回すよう誘導すると見せかけて、裏ではその製造を宮廷自ら独占したという、何だか純粋でないお話。
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