収蔵庫
地名をあれこれ調べていて興味深い地名にたくさんめぐり合った。本日の記事でそれらにまとめて言及する。
- シューマンの故郷ツヴィッカウの西約60kmの街。「Moxa」と綴る。これを辞書で引くと「灸を据える際の材料」とあり起源が日本語だとされている。つまり「モグサ」だ。この地名が本当に日本語「モグサ」に由来するものなのか、にわかには信じ難い。地図で見る限り相当な田舎である。地名に反映するほどの日本との交流があるとも思えない。
- 始祖鳥の化石産地ゾルンホーフェンの南西およそ3kmに「Apfelthal」がある。直訳して「りんごの谷」だ。かわいらしさで申せばトップクラス。愛用の道路地図の索引には掲載されていない。
- 鉄道模型で有名なメルクリン社の本社があるゲッピンゲンをまず見つけよう。シュトゥットガルトの東南東およそ35kmにある。ゲッピンゲンが見つかったらそこからフィルズ川を東南東に15km遡ったあたりにあるのが「Kuchen」という街。「クーヘン」と読むが何と「ケーキ」の意味だ。
- こちらはスイス。スキーリゾートとして名高いサンモリッツの北北西およそ20kmに「Barentritt」がある。赤文字はウムラウトなのだが、意味は「熊の足跡」だ。
- 今度はドイツ最大の島リューゲン島にある。東北の端にザスニッツという街がある。そこから南に続く砂州の中央よりやや南に「Prora」がある。ナチスが2万人のキャパを誇る保養設備の建設を企てた場所。大戦の勃発と共に打ち捨てられ今もなお廃墟が残る。
- 北ドイツの港町キールの南南東およそ10kmに「Honigsee」がある。「ハチミツの海」または「ハチミツの湖」の意味。近所に小さな湖があるのでこちらの名前に因むか。そこから流れ出す小さな川には「Honigau」と書かれている。
- ミュンヘンの西南西およそ15kmの位置に「Vaterstetten」がある。「父の街」だ。一方ルートヴィヒスハーフェンの南西およそ10kmには「Mutterstadt」もあった。「母の街」とでも解せばいい。「父」や「母」は地名の構成要素になりにくいから目立つ。
- スイスの地名を調べていて興味深い発見をした。バーゼル市内を流れるライン川の左岸。ヨハネス橋の上流200m一帯の地名が「Totentanz」だ。正確には「死の舞踏」ではなくて「死者の舞踏」かもしれない。地名語尾「tanz」は非常に珍しい。近辺の教会に「死の舞踏」の壁画があったことに因むらしいが、確認できていない。
- 同一地名語尾が一つの地名の中に連続するという珍しい例。「Ostenfeldfeld」という地名が実在する。ユトランド半島の付け根の西海岸、ブラームスの父の故郷ハイデの北およそ50kmの港町フーズムを探そう。フーズムの西南西およそ20kmの位置。「feld」が語尾で連続している。地元民はちゃんと発音しているのだろうか。すぐ西となりに「Ostenfeld」という街があるから「Ostenfeld+feld」という成り立ちだろう。
- 愛用の道路地図で見つけた。ニュルンベルクから南東に30kmくらい行ったところに、ノイマルクトという街がある。そこから10km南に「Jura Zoo」と書いてある。「Zoo」はさすがに「動物園」の意味だが、「ツォー」と発音するようだ。でもって「Jura」は「ジュラ紀」だから驚く。恐竜でも飼っていそうな感じがする。先般「始祖鳥のふるさと」と紹介した「アルトミュールタール自然公園」の北側に隣り合う位置にあるから、相当期待できる。地名ではないに決まっているがつい勢いで。
- 奇妙な縁で探し当てた地名。ドイツの蒸気機関車運行路線を調べていた。レーゲンスブルクの東およそ60kmの位置に、ヴァンデルバーンという路線があって、蒸気機関車が運行されている。ゴッデスツェルからヴィーハタックまでおよそ20km程の路線。途中に出現するのが本日のお題にもなっている「Gstadt」という駅だ。何と読むのか興味深い。素直には「ゲーシュタット」なのだろう。「Stadt」はドイツ語で街だから「G街」という意味か。「G」の後に省略符もないので何かの省略でもなさそうだ。たとえば「H-Altona」といえば「ハンブルク-アルトナ」という意味があるように。近隣に「G」で始まる大きな都市も無い。不思議がってもいられない。隣国オーストリアの都市リンツの南東およそ40kmにあるワイトホフェンという駅から出ている路線にも同じ「Gstadt」という駅がある。驚いたことにこちらも蒸気機関車が運行されている。さらにその「Gstadt」の南南西40kmのところに「Gstadterboden」という駅もある。手元の道路地図にもあったが、こちらは最小のフォントで記されていて索引からははずれている。その気で捜すと「Ibach」や「Adorf」もあるから、アルファベット1文字が語幹の地名も珍名という訳ではなさそうだ。
- Agathenburg ハンブルクの真西約30kmにあるエルベ川南岸の街だ。「アガーテの城」くらいの意味である。アガーテといえば弦楽六重奏曲第2番で名高い元婚約者の名前。ブラームスの故郷ハンブルクに近いところがミソ。
- Marxsen ハンブルクの真南約25Km。今度は10歳のブラームスが師事したピアノと作曲の教師の名前そのままの街があった。
- hausen 地名語尾「hausen」が「heim」と棲み分けられている。「haus」(家)の複数形が元で、「集落」の意味だとされている。一方スイスで話されているドイツ語において「hausen」には「節約する」という意味が生じている。そういえばスイスの地図の索引を探していていても地名語尾「hausen」を含む地名が見つからない。
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