飲んだ可能性
記事「逆引きビアリーガ」には78のビール会社が並ぶ。社名のアルファベット順に列記したが、これを創業年順にソートしてみると面白いことがわかる。
<1750年以前>
24社。バッハの没年以前ということ。つまりこの24社の製品をバッハが賞味していた可能性があるなどとはしゃいでいる場合ではない。輸送手段が馬車に限られていた時代だから、醸造所から半径30km程度の範囲でしか賞味できなかった。悪いことにバッハは若い頃にハンブルクやリューネブルクに出かけたほかは、生涯旧東ドイツの狭い地域を出ることは無かった。だからこの24社のうち飲んだ可能性があるのは、わずかに2社。ライプチヒ近郊で1534年創業のUrKrostize社か、1543年創業のバートケストリッツ社くらいに絞られる。
<1751年以降1827年以前>
15社。バッハ没後、ベートーヴェン没まで。ビールの運送手段が馬車という意味では、バッハの時代と大して変わらない。30歳でウィーンに出てしまっていることも考慮するとベートーヴェンが飲んだ可能性は、24社+15社の39社の中から抽出することになる。
- Sion 1318年 ケルン 生地ボンに近い。
- Gaffel 1396年 ケルン
ライン川沿岸の街だとビールの輸送は水運ということもある。出荷範囲はもう少し伸びたに違いないからフランクフルト、デュッセルドルフあたりの製品も加えてよいかもしれない。
<1828年以降1897年以前>
33社。ベートーヴェン没以降ブラームス没まで。まずこの間に33社が創業していることが大きい。産業革命以降ビールが基幹産業になったことと関係がある。労働者層は巨大なビール消費者層だった。そしてビール輸送の根幹は鉄道になるから半径30kmの制限は撤廃される。さらにブラームスは壮年期以降大作曲家として各地を飛び回るから、行く先々での会食には事欠かない。この33社以前の15社と24社を加えた72社について、あるいは創業年不詳の3社を入れた75社についてブラームスが賞味した可能性が浮上する。
行く先々で地元のビールを飲んだに決まっている。
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