酸敗
ビールの敵。発酵または熟成中のビールが微生物の影響を受けて酸っぱくなること。今ほど微生物管理が出来なかった時代には、ビール醸造はいつも酸敗の脅威との戦いだった。酸敗の原因が微生物の活動であることさえ判っていなかった。特に発酵の温度が高い上面発酵では深刻だった。アルコールの度数を上げたり、ホップの配合を増やしたりと手を打ってはいたが、それでも2割は酸敗のためにその年のビールが全量廃棄となったらしい。醸造家というのはとてもリスキーな商売だった。
味噌醤油は塩分が高いことである程度微生物の増殖を抑えられるが、ビールに塩を混ぜるわけにも行かない。
バイエルン地方の醸造家は、水が凍結するような低温でもゆっくりと発酵を続ける酵母がいることに気付いた。発酵温度を14度未満に抑えながら、じっくりと発酵させることで、不要な微生物の増殖を抑えることを思いついた。この酵母は発酵タンクに沈殿するので「下面発酵酵母」と言われる。冬の間に川から切り出した氷を洞窟に貯蔵して、その中で発酵を進めるのだ。「ラガー」の起源である。
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