世界のビール図鑑
ネコパブリッシュ社から2010年に出版された本。今日本語で読める最も詳しいビール図鑑だと思う。編集主幹はティムハンプトンという人物。世界のビール会社1700社ほどが紹介されている。代表的製品がカラー写真で掲載されていてラベルを見ているだけで楽しい。加えて創業年を初めとする簡単なコメントが添えられている他、所在地、ホームページアドレスが漏れなく載っている。
あまたある会社のうちどこを載せてどこを載せないのかの基準は必ずしも明らかではないが、そうした「出たとこ勝負感」もまた貴重だ。たとえば日本のメーカーは20社掲載されているが、いわゆる有力5社からはたった1社が写真無しのその他扱いで収載されているだけである。
さて、本文はまず主要5カ国から記述される。アメリカ、ドイツ、イギリス、ベルギ-、チェコだ。筆頭のアメリカは169社が収載されている。ドイツは147社だ。現在ドイツには1500のビール会社があるとされているから、およそ1割弱が載っている計算になる。先も申したとおり何が基準かは必ずしも明らかではない。生産量ドイツ最多のエッティンガーが載っていない。バイエルンミュンヘンをサポートするパウラナーもない。ドイツビール生産高15傑のうち、収載があるのは、やっと過半数の8社。企業規模はあまり関係がないようだ。生産高世界第一位の中国からはわずか4社が取り上げられているに過ぎない。
元々米国目線の書物なのだろう。ドイツの某醸造所の紹介記事に「ブラックフォレスト」(Black forest)という表現があった。前後の文脈からこれは、いわゆる「黒い森」でドイツ語でいう「Schwarz Wald」のことだとわかるのだが、翻訳にあたっては「シュバルツヴァルト」もしくは「黒い森」とでもしてもらいたいところだ。いきなり「ブラックフォレスト」と言われても当惑するばかりだ。本当にためになって楽しい図鑑なのだが、読み込んでゆくと、最早ドイツ補正かかりまくりの脳味噌にとっては、さりげないところのアメリカ目線が妙に気になる。
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