皇帝の名の下に
ドイツで唯一皇帝の名を戴くのが「KaiserWilhelmTunnel」だ。場所はライン沿岸のコブレンツからモーゼル川を遡ってトーリアに抜ける途中にある。Cochem駅とEdige-Eller駅の間だ。ここでいうウィルヘルムはドイツ帝国初代皇帝のウィルヘルム1世のことである。
トンネルの着工が1874年で完成が1877年。1871年の普仏戦争勝利により成立したドイツ帝国の威信をかけたトンネルだ。フランスに譲渡させたアルザス・ロレーヌ地方をはじめ、ドイツの西部国境は軍事上の要衝だったから、巨大な輸送ニーズが発生した。コブレンツとトーリアを結ぶ鉄道はいわばその大動脈だ。皇帝の名を冠するトンネルの完成によりモーゼル川沿いを律儀に走るより一気に5kmに短縮されることとなる。
その総延長4205mは、完成当時ドイツ最長のトンネルとなったばかりか、驚くことに1988年までその位置づけを維持した。つまり1877年以降ブラームスの生きている間、ドイツ最長トンネルであり続けた。
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