トンネルの噂
オーストリアではとんでもないトンネルの計画がある。世界遺産ゼメリンク峠をおよそ27000mのトンネルでクリアしようというものだ。現在オーストリア最長のトンネルを倍も更新する長さだ。その計画について論じてみる。
<現状>
- 標高 Gloggnitz(439m)-Semmering(896m)-Murzzuschlag(679m)
- 直線距離 Gloggnitz-Semmering 10.0km/Semmering-Murzzuschlag 12km
- 線路延長 Gloggnitz-Semmering 29.0km/Semmering-Murzzuschlag 12.7km
- 所要時間 Gloggnitz-Semmering 36分/Semmering-Murzzuschlag 14分
- 平均時速 Gloggnitz-Semmering 毎時48.3km/Semmering-Murzzuschlag 毎時54.4km
- Gloggnitz-Semmering間の457mの標高差で、直線距離が10kmだから、平均勾配は45.7‰だ。19世紀の鉄道としてはかなりな急勾配だ。
- だからおよそ3倍も距離をかけて高度差を克服する。勾配は15.7‰に薄められる。最大斜度でも20‰を切る。
- 表定速度は現代の電気機関車でも48.3km/hに留まる。
<トンネル>
Gloggnitzを出てすぐトンネルに入り、Murzzuschlagの寸前でトンネルを抜ける。SemmeringはパスするからGloggnitz-Murzzuschlagの標高差240mを30000mかけて登ればいいので、平均斜度は8‰程度になる。時速60kmが確保出来れば所要時間は30分となり、現在の50分からみれば20分短縮になる計算だ。
トンネルは確かに技術者の夢だ。しかし景色が犠牲になる。あたりは絶景で知られるゼメリンク峠だ。莫大な工費をかけて20分程度の短縮では、割に合わないと感じる。ゼメリンクなんぞに用のないイタリアやグラーツに抜けたいビジネスマンにとってはトンネル歓迎かもしれないが、急ぐなら飛行機でどうぞと申し上げたい。もっとも万が一トンネルが完成しても、世界遺産に指定された今、ゼメリンクの鉄道は保存されるに決まっている。
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